TikTokは米国の圧力を乗り越えることができるのか

 世界中で利用されるSNSはFacebook、Twitter、YouTube等ほとんどが米国発のサービスである。そんな中、異彩を放つのが中国系アプリのTikTokだ。今回はそんなTikTokが、なぜトランプ政権の標的となったのか、TikTokの過去と現状とともに整理していきたい。

米国内で禁止されるTikTokの推移

 事の発端は2018年8月まで遡る。TikTokを運営する中国のByteDance社が、米国中心にユーザーを獲得していた同様の動画アプリMusical.lyを買収したことだ。

 実はTikTokは、このMusical.lyのアプリを模倣して誕生したと言われている。当時、市場シェアを争っていた競合のMusical.lyを買収したTikTokは、当然そこから大きくユーザーを獲得し、急成長を遂げることに成功した。

 すると2019年後半、このMusical.ly買収の一件が、米国にとっての安全保障リスクに繋がるものだったのではないかと、米国共和党議員の依頼のもと調査が始まった。中国には2017年に制定された国家情報法という法律が存在する。この法律では「個人や企業は政府の情報活動には協力しなければならない」と定められている。つまり、ByteDance社はTikTokで集めた情報を、中国政府の指示があれば提供しなくてはならないということになる。

 このような法律が存在する以上、米国のTikTokユーザーの個人情報流出の可能性は拭いきれない。そこで今年8月、トランプ政権はTikTokを安全保障リスクに繋がるものと判断し、米国内でのサービス提供の禁止を命じた。これによりByteDance社は、米国での活動そのものを諦めるか、米国内での事業を他の米国企業に売却するか、どちらかの選択を取らざるを得なくなった。

 その後、ByteDance社はTikTok米国事業の売却を目指し、Oracle社、Walmart社と協議を進めている。しかし現在、交渉は順調には進んでおらず、三度目の延長期限であった12月4日を過ぎるも、最終合意には至っていない。一方、大統領令を発動したトランプ大統領も自身の選挙の不正を暴くことに追われており、それどころではないだろう。現在は、売却交渉の最終合意待ちという状況である。事の結末は、来年以降のバイデン政権に委ねられることになるのだろうか。

 それでもなお根強い人気のTikTok

 このような環境下にあるTikTokだが、拡大の勢いが止まることは暫く無いだろう。世界で月間アクティブユーザー数8億人を抱えるTikTokは、SNS利用者数ランキングで現在6位につけている。さらに先日Apple社が発表した2020年世界アプリダウンロードランキングにおいて、コロナ禍で急速に広まったZOOMに次ぎ、TikTokが第二位に輝いた。

 さらにTikTokは、ライブ配信における投げ銭機能を実装することで、ユーザーの収益化に注力し始めている。日本でも来年1月後半から導入される予定だ。TikTok内のクリエイターの囲い込みに繋がるだけでなく、新たに動画投稿を始めるユーザーの獲得にも期待ができるだろう。質の高い動画を配信するクリエイターが多く生まれれば、それを見るユーザーが増えるのも当然だ。成長の勢いの止まらないTikTokと、それを牽制する米国。米中関係の今後を探る上でも、引き続き注目していきたい。

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