コロナ禍の新たな観光スタイル「オンライン旅行」

 コロナ禍で人の往来が制限されている今、観光業界は深刻な被害を受けており、大きな転換期を迎えている。日本国内の観光業はGO TOトラベルによって少しだけ回復の兆しを見せたかもしれないが、海外旅行は未だ難しい状況だ。

 そのような状況において、アメリカの多くの旅行会社は、自宅にいながらにしてオンライン上でバーチャルに旅行気分を楽しめる「オンライン旅行」に力を入れ始めている。検索エンジンで「オンライン旅行」と検索すると、大手の旅行会社から現地在住日本人が案内するものまで、様々な形態でのオンライン旅行を目にする。どのようなものがあるのか詳しく見ていこう。

オンライン旅行の実態

  「オンライン旅行」は大きく分けると“セミナー型”と“ツアー型”の2種類に分類される。 

①セミナー型

 事前にガイドが撮った写真や動画を用いて、Zoomなどのオンライン会議ツールを通じての説明方式。Googleのストリートビューを使って本当に散策している気分になれるものもある。YouTubeや動画サイトで一方通行での動画を見るのではなく、ガイドに質問しながらより深く知ることが出来る。 

 例えば、アメリカニューヨークのメトロポリタン美術館の代表作品を鑑賞するコース。世界三大美術館のひとつであるメトロポリタン美術館は1日では回り切れない広さだが、隅々まで知り尽くしている熟練ガイドが、ガイドブックには書いていないエピソードや時代背景なども含めて、選りすぐりの有名展示作品を1時間でじっくり解説してくれ、最後には質疑応答の時間も設けられている。

 ②ツアー型

 こちらはリアルタイムでライブ配信での観光。会社によっては独自のアプリを開発して、一方通行ではなくインタラクティブなツアーを実現しているところも。例えば、アメリカラスベガスを現地ガイドと街歩きするコース。ツアー中は、好きなカメラアングルを選んで観光スポットを記念撮影することが出来る。撮った写真はフォトアルバムに保存され、後でまとめてダウンロード出来る。街歩き中のスタッフの現在地も地図機能でリアルタイムに確認することが出来る。プライベートで催行されることが多いため、質問はその都度受け付けてもらえる。リアルタイムで散策するため、現地の「今」を感じることが出来る。

  オンライン旅行のメリットは、物理的に移動する必要がないため、飛行機などでほぼ一日移動にかかるような場所も気軽に見ることが出来る。時間も1時間ほどのものが多いため、ちょっとした隙間時間で新しい世界を見ることが出来る。1日で世界一周することも可能だ。旅行先を検討している場合、事前に下見を兼ねて体験することも出来る。その際、ガイドの人となりを予め知ることが出来るので、実際に現地に赴いたとき、スムーズにコミュニケーションを取ることが出来る。

  逆にデメリットとしては、旅行の醍醐味である、実際に見て触って感じることは出来ない。また限られた人としかコミュニケーションは取れない。

 Amazonも参入

 観光業界にとっては異業種ともいえるAmazonも、オンライン旅行に参入している。そのサービスはAmazon Exploreといって、まだベータ版だがアメリカのユーザー向けに展開されている。 

「ラーニング&クリエイティビティ」「パーソナルショッピング」「カルチャー&ランドマーク」の3つカテゴリーに分かれていて、北米、中米、南米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアの6エリアが現在の対象エリアである。

  操作方法は既存のオンラインショッピングと変わらず、受けてみたいサービスを選択し、日にちと時間を予約する。例えば、京都の祇園をガイドと回るツアーは40分で55ドル。手巻き寿司パーティーの開き方のレクチャーは50分80ドル。ニューヨークのセントラルパークの歴史を学びながらガイドと回るツアーは45分で90ドル。日本の旅行会社が提供するオンライン旅行に比べると、全体的に割高な印象を受ける。

  このように、大手企業も参入して始めている「オンライン旅行」。旅行先を決める下準備や、物理的に旅行が不可能な人が活用することができるので、コロナが終息した後も観光業界のニューノーマルとして、通常の旅行と共存していく可能性は大いにあるのではないだろうか。

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