慶応義塾大学病院・中部電力など、糖尿病・肥満症外来において血糖のクラウド管理システムを用いた遠隔診療を開始

現在、新型コロナウイルスは終息する傾向はなく、通院による感染リスクや身体的・精神的負担の軽減が必要とされていますが、不用意な対面診察の延期は病状悪化をもたらす恐れがある。慶應義塾大学病院、中部電力株式会社、メディカルデータカード株式会社は、慶應義塾大学病院の糖尿病・肥満症外来(腎臓・内分泌・代謝内科)において、血糖のクラウド管理システムを用いた遠隔診療および遠隔診療を支援するシステムの運用を共同で開始した。同システムは、中部電力のデータプラットフォームとメディカルデータカードのMeDaCaアプリを活用し、2020年6月に産科外来で開始した遠隔妊婦健診システムに患者自身の血糖値やインスリン等の使用量を記録する仕組みを搭載したものである。血糖値のデータを医師がリアルタイムで確認できるため、従来の産科外来における遠隔妊婦健診の対象であり短期でのフォローが必要となる妊娠糖尿病や妊娠高血圧症の人も利用対象としている。さらに、1型糖尿病などインスリン頻回注射療法を行っておりインスリン量の細やかな調整が必要な人や、生活習慣や心理面を把握する事が必要で対話が重視される肥満症外来でも活用できる。血圧計や体重計とは既にクラウドの連携により自動でデータ収集が可能であり、将来的には簡易自己血糖測定器との連携も行い、患者のデータ入力負担の軽減を目指すとのことだ。従来通りメディカルデータカードのMeDaCaアプリを活用し、医師と患者のビデオ通話による診察や、検査結果・処方箋控えデータ等のアプリへの送信も行なっており、同システムは糖尿病専門医と患者、糖尿病専門医とかかりつけ医をつなぐ情報の架け橋としての役割も担う。現在、妊娠糖尿病患者の診療に同システムを導入開始しており、利用者からはシステムそのものの利便性の高さ、通院負担や時間的拘束からの解放、テレビ電話機能によるFace to Faceの安心感などの面で評価されているという。特に妊娠糖尿病分野において、医師側として実際の対面診療と遜色ないデータが揃っている点や、データが集約された事による視認性の改善、患者の通院負担を気にかけることなく短期でも診察が可能である点で、診療業務の効率化と同時に医療のクオリティ向上が期待できる。同システムを活用して在宅測定データを医師が遠隔でリアルタイムで確認することで、治療方針変更後の早期の治療効果の確認、血糖コントロールの状況に合わせた来院時期の調整、遠隔診療もしくは対面診療とするか事前に判断するなど、患者の実際のデータに応じた対応を行うことが可能となる。

実際のPC画面のイメージ

同システムがつなぐ医療データのネットワークなお、慶應義塾大学病院は、内閣府より戦略的イノベーション創造プログラム「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」の研究開発事業を受託している。その一環として、在宅患者の見守りや遠隔診療支援、コミュニティヘルスケアサポートについて、中部電力と共同で研究を進めており、同取り組みはその成果の一つである。

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