新型コロナ対策を抜本的に見直すべきだ|唐木英明 安倍晋三首相が8月の退任表明会見でインフルエンザと同じ5類扱いに変更する方針を発表したにも拘わらず厚生労働省は来年1月で期限を迎える2類扱いを1年延長することにしてしまった。2類扱いの弊害はあまりにも大きい。

新型コロナウイルス対策には多くの問題がある。実は早い段階から、新型コロナの感染性と重症度はインフルエンザと大きく変わらないことが分かっていた。また、日本では欧米に比べて感染者と死者が極めて少なく、欧米のような厳重な対策は不要である。にもかかわらず、感染症法上「2類」相当という危険性が高い分類にしてしまった。

弊害を生んだ高リスク感染症扱い

対策の決定と国民への情報提供に大きな役割を果たしたのが政府の専門家会議だった。関係者が連日テレビで「3密」防止、接触の8割減少を呼びかけ、このままでは40万人の死者が出ると警告するなど仮想の数字で恐怖感を煽り、緊急事態宣言の発出を求めた。NHKも日々の感染者数を大きく報道して恐怖を拡大した。国民は外出自粛と営業自粛という過剰な対策に協力せざるを得ず、恐怖感から偏見、差別、私的な「自粛ポリス」の出現など多くの弊害が生まれ、経済は重大な被害を受けた。

その後、政府は負の影響が大きい緊急事態宣言を解除したのだが、専門家会議(現在は分科会)は医師会とともに医療崩壊の危機を叫んで新たな自粛を求め、旅行業と外食業の窮地を救うためのGoTo事業も感染防止の名のもとに中断された。

そもそも人口当たりのベッド数が世界最多の日本で医療崩壊が起こる理由は、2類感染症のための少数の重点医療機関に、感染者の8割を占める軽症、無症状も含めて感染者全員入院させたためだ。それでも重点医療機関のベッドは全国で半分以上空いているのだが、感染者が急増した地域の特定の重点医療機関だけが医療崩壊状態になる。局地的な危機は全体の協力で防ぐことができるのだが、政府も分科会も医師会も問題解決の努力を放棄し、その解決を国民の自粛に求め続けている。2類扱いの被害は保健所にも及び、感染経路の調査や感染者の入院先の選定などに忙殺され、通常業務が困難になっている。

インフルエンザ並みの対応でよい

2類扱いは新型コロナの実態に合わず、その弊害は極めて大きい。安倍晋三首相は8月の退任表明会見でインフルエンザと同じ5類扱いに変更する方針を発表し、メディアは2類と5類の解説を始めた。これで医療、社会、経済の多くの被害をなくすことができ、2類扱いのために要した莫大な経費は高リスク者の感染防止と救命に集中することができ、ずっと多くの人命救助が期待された。

ところが厚生労働省は来年1月で期限を迎える2類扱いを1年延長することにした。そうであれば、その運用を大幅に柔軟化して欠点を排除し、天災に輪をかける人災を軽減すべきである。(2020.12.21 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

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