年俸上がらず〝副業〟もなし オフでも続くコロナ不況

コロナ不況でオフの副業が激減(写真はイメージ)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】今年も残すところ1週間あまり。例年であればプロ野球選手はこの時期「オーバーホール」という名のもと、温泉旅行やゴルフ等でつかの間のオフを楽しむのが恒例だ。ところが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり自粛を余儀なくされている。

先日連絡を取ったパ・リーグの中堅選手も「今シーズンは公式戦が11月上旬まであったのでオフがいつもの年より短い。そこに12月から再び外出自粛が叫ばれてますから。家族旅行も泣く泣くキャンセルしましたよ」と肩を落としていた。長いシーズンを「外出禁止」で戦い抜きながらオフもなお自粛の日々。社会情勢を考慮すればやむを得ないが、こうした選手の「オフの誤算」は個人的な行事にとどまらない。毎オフに開催されるイベントも今年は軒並み中止に追い込まれているという。

「プロ入り以来、最低でも毎オフに2~3件のイベントには呼ばれていた」という前出選手。今年は現時点でイベント参加の予定はない。

「オフのイベントといえばサイン会やトークショー、野球教室が中心なので、どうしても密になったり接触する機会が出てくる。中止は仕方がないと思いますが練習以外に何もしない静かなオフは初めてですよ」

同選手によれば、昨年は1~2時間の催しでウン十万円の謝礼がもらえる営業イベントが多々あったという。最終的にテレビ出演等を含めオフだけで100万円近い臨時収入を得たそうだが、今年はゼロ。この異常事態は選手の間でも話題になっているんだとか。

「いわゆる“副業”ができないので、年俸が低い若手や二軍選手にとっては痛手になっているみたいで。僕の後輩も『今オフはどこからも呼ばれていない』と嘆いていました。今年はコロナの影響で球団査定も厳しく、大幅年俸アップを勝ち取った選手はごくわずか。その補填をオフのイベント参加でカバーしようと考えていた人も少なからずいたようなので…」(前出選手)

コロナ不況といえば観光業等が真っ先に思い浮かぶ。こうした業種に携わる人たちに比べればプロ野球選手はまだ深刻な状況ではない。とはいえ、球界内でも様々な場面でコロナの影響が出ているのもまた事実と言える。

華やかで夢のある業界の象徴だったプロ野球界もコロナの終息なしに日常は戻らない。来シーズンこそは活気ある球界の再来を切に願いたい。

☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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