養殖現場でスマート漁業 ツナドリーム五島とKDDI アプリ使い効率化、安全確保

ICTを活用した情報共有の仕組みを説明するKDDIの担当者=五島市玉之浦町、荒川集会所

 五島市でクロマグロの養殖を手掛ける「ツナドリーム五島」(高橋誠代表)は、通信大手KDDIなどの情報通信技術(ICT)を生かしたスマート漁業に取り組んでいる。スマートフォンの無線通話アプリを使い、海上にいる複数の作業員らが同時に情報共有できる仕組みで、作業効率化や安全確保が目的。両社などが23日、市内で報道機関向けの説明会を開催した。
 これまで海上の養殖いけす周辺では、風や機械の音が邪魔をして作業員同士の会話が聞こえにくかったり、天候の急変や赤潮の発生など緊急時の一斉連絡ができなかったりと、コミュニケーション上の課題が多かった。
 こうした課題の解決のため導入したのが、サイエンスアーツ(東京)が開発したアプリ「buddycom(バディコム)」。通話にはLTE回線を利用し、養殖場の作業員や陸上のオペレーターが一斉、または個別に会話できる。スピーカーとマイクが一体になった機器を使うことで、スマホに触れずに通話することも可能。会話の内容を自動でテキスト化したり、各作業員の位置情報を地図上で把握したりする機能もあり、従来の船舶無線を導入するよりも大幅にコストを抑えられるという。
 KDDIと五島市は昨年度、ICTによる地域活性化を目指す連携協定を締結。KDDIは昨年8月~今年3月、ツナドリーム五島の協力を得て、今回のアプリを養殖現場に活用する実証事業を実施。ツナドリーム五島は4月以降も継続してアプリを使っている。
 マグロ養殖では潜水作業も伴うことから、KDDIは「水中の作業員ともコミュニケーションが取れるよう、実用化に向けた研究を進めたい」とする。

作業員同士が会話するためのアプリが入ったスマホ(右)とスピーカーマイク

© 株式会社長崎新聞社