[Report Now!]ライブ配信「Canon Creator Society LIVE」の制作現場をのぞく~シネマルックにこだわった理由とは

txt・構成:編集部

映画のようなルックで行ったライブ配信番組が話題!

今年のInter BEE 2020は、残念ながらオンライン開催となった。展示会場での開催は中止となったが、出展各社はInter BEEに向けて何かしらコンテンツを用意していたはずだ。ソニーやキヤノン、Blackmagic Designは独自のオンラインイベントを開催し、セミナーやトークセッションを公開した。

Canon Creator Society LIVEの配信映像

その中でも「Canon Creator Society LIVE」は、ライブ配信イベントながら、映画のような映像表現やアメリカのトーク番組のような演出が話題を呼んだ。シネマティックな映像でライブ配信というのは聞いたことがない。なぜルックにこだわったのか?どのように実現したのか?現場の裏側を紹介しよう。

CINEMA EOSシリーズのトップエンド機材を惜しみなく使ったライブ配信番組

ライブ配信1日目の配信現場の様子を紹介する。配信会場はキヤノンマーケティングジャパン本社ホールS。驚いたのは、発表会やイベントに使われるほど広いホールで、舞台セットを組んでもまだスペースに余裕があり、会場の広さに驚いた。

キヤノンSタワー3階にあるキヤノンホールS

ホール中央には部屋をイメージした美術セットがあり、その周りを囲むように円形レールを組んで移動カットができるようにセッティングされていた。ライティングにもこだわっており、ステージの真上にぼんぼり状のライティングを一灯設置し、クレーンで支えていている。これにより少し暖色系の感じで影もキュッと絞まるライティングを実現している。さらに、左右の高い位置から出演者に向けて投影している。照明部により、映画やCMと同じライティングを行っている。

撮影機材は、贅沢すぎるほどで、カメラはキヤノンで今一番旬なC500 Mark II、C300 Mark III、C70の5台と、一切妥協がない。レンズの中では、CINEMA EOSシステムトップエンドのズームレンズCN-E14.5-60mm T2.6がも誇らしげに目立っていた。広角レンジとして登場したレンズで、光学設計は妥協がなく、とてもいい画が撮れる一番よいシネマレンズだ。そのほかには、トップエンドのレンズをコンパクトでライトに使えるようにしたコンパクトズームレンズのCN-E15.5-47mm、フルサイズにはEF70-200mm F2.8L IS III USMなどを使用。ちなみに、返し用のモニターには業務用のマスモニが使われていた。

これだけの機材と撮影には相当な予算が必要だが、カメラメーカー主催だからこそ実現できたのだろう。これは非常に面白いと思った。

CINEMA EOSシステムのレンズのトップエンドのズームレンズ、CN-E14.5-60mm T2.6。ドリーに載せて使用

小型・軽量の広角3倍ズームレンズ、CN-E15.5-47mm T2.8 L S。ステージ下の中央からフィックスの画の撮影に使用された

フルサイズのC500 Mark IIには、フルサイズEFマウントのEF70-200mm F2.8L IS III USMを組み合わせ。MCを抜くカメラと、出演者を抜くカメラの2台で使われた

RF15-35mm F2.8 L IS USM+C70+DJI RS 2の組み合わせ。主にオープニング撮影に使用

一昔前のアメリカ映画を狙ったオリジナルLUTでライブ配信

では一体、どのようにしてシネマティックなライブ配信を実現したのか?ライブ配信2日目の配信前に番組のホストMCや企画を担当したキヤノンマーケティングジャパンの矢作大輔氏、演出を担当したUW INC.の押川賢吾氏、福島慎之介氏に1日目の反省やトーンの秘密などを聞くことができた。

左から、キヤノンマーケティングジャパンの矢作大輔氏、演出を担当したUW INC.の代表 押川賢吾氏、ディレクター 福島慎之介氏

――シネマティックな映像表現が話題ですが、なぜこのような映像表現を狙ったのでしょうか?

矢作氏:Inter BEEのキヤノンブースでは、毎年オープンセミナーという形でクリエイターの方に出演いただいて、トークセッションを行っています。しかし、今年はInter BEEがオンライン開催なのでそれができません。自社でライブ配信番組として行うならば、オリジナリティのある形で実現できたらと思いました。

そこで映像制作の企画・制作で活躍しているUW INC.に相談したところ、シネマカメラで普通に撮るだけではなくて、オリジナルLUTを作って、ルックや演出にこだわったライブ配信を行うことになりました。この画作りをできたのは特に大きいかなと思います。

福島氏:LUTは、少し古め目のアメリカ映画を狙いました。コントラストは強くしていますが、黒を際立たせるよりは、白を少し上げています。そのLUTを5台のカメラに入れて適用しました。すべてキヤノンのCINEMA EOSシステムで統一していると簡単ですよね。一個LUTを作ってすべてのカメラにコピーするだけです。

矢作氏:C500 Mark IIやC300 Mark IIIには、SDI OUT端子をはじめとする出力映像にLUTを適用できるビューイング/再生LUTの機能があります。C70には、収録も出力もすべてオリジナルLUTが適用できるようになっています。いずれにしても、すべてのカメラで同じLUTを適用した画がでている状態を作ることができました。

――スーパー35mmやフルサイズなどイメージセンサーサイズは5台バラバラですが、それでもCINEMA EOSシステムであれば、色は統一できるものですか?

福島氏:C500 Mark IIとC300 Mark III、C70はほぼ似たような感じになります。

矢作氏:それよりも画に違いがでるとしたら、レンズでしょう。やっぱりCN-E14.5-60mm T2.6はずば抜けていました。

福島氏:そうですね。CN-E14.5-60mm T2.6はスーパー35mm相当なので、C300 Mark IIIと組み合わせてドリーに搭載しました。ドリーのカメラは本当に良すぎで、5台のカメラがあっても画でわかっちゃうぐらいでした。

EF70-200mm F2.8L IS III USMはフルフレームのC500 Mark IIと組み合わせたのですが、シネマレンズとC300 Mark IIIの組み合わせの画の存在感はそれ以上でした。正直ドリーのカメラは、引けば全体が見えて、寄れば出演者に迫れる。どちらにも対応できる飛び道具的なつもりで、多様するつもりはありませんでした。しかし、すごく綺麗で考えを改めました。配信でも割合は高くて、1/3ぐらいはドリーの画を使いました。

ドリーに載せたCN-E14.5-60mm T2.6の撮影風景

CN-E14.5-60mm T2.6の映像

――セットや演出にも工夫が感じられるライブイベントでした。最後に、そのあたりのこだわりを教えてください。

福島氏:米国には、司会者が看板となっているトーク番組がいくつかあると思います。そんなホストMCがいて、クリエイターたちとゲストトークするような演出をイメージしました。オフィシャルなパブリック空間というのではなくて、プライベートな空間を狙いました。

押川氏:イベント自粛の動きが広がる中で、配信の案件が大変増えてきています。UW INC.ではこれまでの配信に飽きを感じていて、もう少し面白い配信ができないのか?と思う層に刺さるような演出を実現できます。配信だからといってチープでいいということはありません。世界感は作り込めるので、もっと楽しめる提案ができたらと思っています。

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