年俸6億1000万円でも安い? 鷹・柳田悠岐の凄すぎる打撃指標の傑出ぶり

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

セイバーメトリクスの打撃指標ではほとんどが12球団トップ

ソフトバンクの柳田悠岐外野手が23日、本拠地PayPayドーム内の球団事務所で契約更改交渉を行い、4000万円増となる年俸6億1000万円で来季の契約にサインした。6億1000万円は2002年の松井秀喜氏(巨人、6億1000万円)に並ぶ日本人野手史上最高年俸となった。

柳田は昨年オフに年俸5億7000万円で7年契約を結び、今季がその1年目。年俸は変動制で、シーズンの結果に応じた出来高分が翌年の基本年俸に上乗せされるという契約となっていた。今季はチームの中心として119試合に出場して打率.342、29本塁打86打点と好成績を残し、最多安打のタイトルを獲得。チームの3年ぶりのリーグ優勝、4年連続の日本一にも貢献し、自身2度目となるパ・リーグMVPにも輝いた。

球界最高の打者と言っても過言ではない柳田。今季、獲得した打撃タイトルは最多安打のみだが、残した打撃指標を見ると、どれだけ球界で頭抜けた存在であったかが良くわかる。

打率.342(リーグ2位)
29本塁打(リーグ3位)
86打点(リーグ3位)
90得点(リーグ1位)
146安打(リーグ1位)
出塁率.449(リーグ3位)

主要な打撃成績を見ると、柳田はどれもリーグ上位に位置していることが分かる。ただ、打率では吉田正尚(オリックス)、本塁打と打点では浅村栄斗(楽天)と中田翔(日本ハム)、出塁率では吉田正と近藤健介(日本ハム)が上回っている。だが、セイバーメトリクスの打撃指標で見ると、柳田は1人群を抜く数値を叩き出している。こののデータは、セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。

勝利期待値の増減への貢献を示す「WPA」や総合的な貢献を示す「WAR」でダントツ

OPS 1.071(12球団トップ)
wOBA .462(12球団トップ)
wRC 115.2(12球団トップ)
wRC+ 205(12球団トップ)
WPA 8.24(12球団トップ)
WAR 8.4(12球団トップ)

出塁率と長打率を足して表すOPSは12球団トップの1.071。両リーグを通じてOPS1.000を超えるのは柳田とヤクルトの村上宗隆しかおらず、パ・リーグ2位の浅村栄斗でさえ.969だった。柳田との差は大きく開いている。

打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増に貢献しているかを評価する「wOBA」は.462でこれも12球団でダントツ。打者が創出した得点数を示す「wRC」も12球団トップで、球場ごとのパークファクターで補正をかけた「wRC+」でもトップ。「wRC+」で205という数値は、リーグの平均的な打者に比べて2.05倍の貢献を果たしたことを意味している。

また、チームの勝利期待値をどれだけ増減させたかによって貢献度を評価する「WPA」という指標でも柳田は12球団でトップ。この数値は重要な場面での一打が高く評価される。両リーグ通じて2位だった浅村の4.90に対して柳田は8.24をマーク。3位の吉田正尚(オリックス)が4.85、4位の青木宣親(ヤクルト)が4.24と小数点以下の差が続いており、この柳田の傑出度合いがお分かりいただけるだろう。

打撃、守備、走塁、そして投球を総合的に評価して選手の貢献度を示す「WAR」でも柳田は12球団でダントツトップの8.4をマークする。2位の坂本勇人(巨人)が5.7、3位の近本光司(阪神)が5.5、4位の浅村が5.4となっており、こちらでも柳田の傑出度が良く分かる。

打撃タイトルこそ最多安打のみだった柳田だが、これらの指標では日本球界においてどれだけ傑出した存在であるかが示されている。その力から言えば、年俸6億1000万円でも“安い”と思えなくもない。そのすごさは誰もが認めるところ。来年以降もその驚異的な打撃力でプロ野球界を盛り上げていってほしいものだ。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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