ANAのエコノミー機内食、実際に買ってみた【レポート】

全日本空輸(ANA)が12月11日から、公式通販サイトの「ANAショッピング A-Style」と楽天市場で販売を開始した、国際線エコノミークラスの機内食。

和食、洋食、子供向けの3つを、それぞれ3種類×4食の計12食をセットにして送料・税込みで7,200円。つまり1食あたり600円。空の上でしか食べられない機内食が家でも楽しめるというのは、ある意味「贅沢」ではあるが、量と価格だけを考えると釣り合っていないようにも思える。だが、話題になることは確か。というわけで、機内食ならぬ”機外食”を注文してみた。

まず注文したのは、和食と洋食、さらに同時に販売を開始した、オリジナルドリンクの「香るかぼす」、ラウンジで提供されているチキンカレーの4つ。よく考えた後、「絶対に機内で子供向けの機内食を食べることはない」という結論に至り、子供向けも追加して、結局コンプリートした。実際に和食と洋食は翌日に売り切れたものの、子供向けはその次の日まで残っていたので、同じように感じた人が多かったのかもしれない。

注文後に「しまった」と思ったのは、「ANAショッピング A-Style」ではANAカード利用で5%割引になるという点。クレジットカードの決済で獲得できるポイントとは別に、100円につき1マイルが獲得できる。一方で、楽天市場では楽天グループのサービスの利用ごとにポイント付与率がアップする「SPU」によって多くのポイントが獲得できる。

そしてすぐ、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏に、「半分買ってください」という半ば強引なメッセージを送り、引き取ってもらうことで決着した。なんといっても36食、賞味期限は2021年1月末なので、残りあと1ヶ月。加えてどれほどの量なのか見当もつかないのである。送り先はあえて、(冷凍庫がない)会社にした。

まずは記事用に全種類の撮影という任務がある、さらには近くにある氷屋からドライアイスを調達できる可能性が高そうだから、という理由である。

ヤマト運輸からの配達日時を通知するLINEが、5通も立て続けに届いたのは、12月15日。冷凍品は受け取り日が配達日から3日以内に限られている。車で家まで運ぶため、12月17日の夜に時間指定をし、社内連絡で「食べに来る人」を募集した。

まずは自宅の冷凍庫に空きを作ることにとりかかる。1年前から冷凍していたままの食パンを捨て、容積が大きい順ということで冷凍ギョーザから処分する。次にプラスチックケースに入っていた冷凍明太子をジップロックに移管、といった涙ぐましい努力により、おそらくなんとかなるスペースを確保。

いざ当日、車で向かったのは氷屋である。会社は飲食店も多い東京・神田に位置しており、だいたいなんでもあるのが良いところ。午後6時30分まで営業している氷屋をGoogleで調べていたので、閉店間際にドライアイスを2キロ購入。960円であった。

出社してしばし待つと、午後7時過ぎにクロネコヤマトで5個の荷物が到着。

とりあえず仕分けの上、食べない分はドライアイスを突っ込んで屋外に放置。9食は暖房の効いた室内で自然解凍させる。

結局、その日勤務していた1人と、機内食目当てで来た1人、そして私の3人で全種類を食べることになった。

ビルの共用スペースにある3台の電子レンジをフル稼働して温める。3つを同時に突っ込み、700ワットで10分強。ちなみに自宅で冷凍庫から直接電子レンジで温めた場合、500ワットで4分半〜5分程度がベストだった。

ちなみに商品と同封されていた加熱方法には、24時間前から冷蔵解凍するのがおすすめ、電子レンジで解凍・温める場合には解凍モード(200ワット)で5分、その後500ワットで3分30秒と書かれていたが、全部無視した。

9種類を3人で食べることになったので、ちょうど和食、洋食、子ども用の3種類を1種類ずつ配分。「香るかぼす」とともに”機内風機外食”の出来上がり。

「お子様向けミール(くまさん)」から。ほうれん草とコーンの上に、味が付いたうさぎ型のご飯とウインナー、卵焼き、温野菜がのっている。ウェブサイト上には「ほうれん草とコーンのベットで、うす焼たまごのお布団をかぶって、お昼寝しているデコ弁」と書かれている。

次に「牛すきやき丼」。甘辛いタレの匂いが食欲をそそるが、思いのほか肉が少ないように感じた。最後にサフランライスとパプリカで色鮮やかな「タンドリーチキン風サフランライス添え」の順に食べた。

皆口々に品評しながら食べたが、3人一致したのは、「1回に食べるのは2個が限界」ということ。やはり味付けが濃いのだろうか、後半以降は飲み物ばかりがよく進んだ。1回の食事でまずメインディッシュを3種類食べることはないだろうが、美味しく食べるには1回2個までというのは良い教訓になった。そもそも普通なら食べることはないが。

もう一つわかったことは、電子レンジから出す時に素手で持てないくらい熱い状態にまで温めるのがベストということだ。意外なほどすぐに冷めてしまうのと、ぬるいと美味しさが半減するように感じる。複数個を一緒に温める時には途中で位置を変えたほうがよい。

子ども用を食べていて、十数年前に上海万博に友人と行ったとき、「ヒンズーベジタリアンミール」を注文したことを思い出した。ネットで調べていたところ、搭乗便の機内食が「かに飯」だったので、甲殻類アレルギーの友人用に勝手に注文したんだったが、これが本人には大不評だった。そういうスペシャルミールセットを販売していたら、つい買ってしまいそうだ。いっそのこと、ワインや果物でやっているような、1年間毎月届く機内食なんていうのもいいかもしれない。子ども用機内食なんて、そのまま子供の弁当箱に入れられそうだし、季節感も出せるかもしれない。

ちなみに鳥海氏宅を経由し、自宅に帰ったのは午後11時半ごろ。残る9食は自宅の小さな冷凍庫になんとか収まったものの、半分が機内食を占めた。2回目の駆け込み注文をした「JAL特製ビーフカレー」も1袋残っている。約6時間弱経ったものの、1キロのドライアイスは半分近く残っていたので買い過ぎだった。

そして忘れてはいけないのが、3キロのチキンカレーである。

「JAL特製ビーフカレー」も、1袋1キロかつ2キロがセットであることから注文を躊躇したという声も、Twitter上などでかなり見かけた。それが今回、常温保存とはいえ、1袋3キロのカレーである。レトルトカレーが1食200グラムであることを考えれば15食分。迂闊に開けてしまうと大後悔は間違いない。まず、このカレーは40分湯煎で温める必要があるようだが、鍋がない。

「JAL特製ビーフカレー」の時には社内でカレーを食べる会を開いた。筆者が自宅から炊飯器、IH調理器、鍋を持ち出し、ラウンジで提供している米「雪若丸」、ラウンジで提供されている風にするための皿を買いに行かせたのだった。今回はそもそも、15食分を炊く炊飯器すらない。

どう処分するのか、次回に続く。

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