【有馬記念】〝最強の2勝馬〟カレンブーケドールは月から太陽になれるか

【有馬記念(日曜=27日、中山芝内2500メートル)美浦トレセン発秘話】広大な美浦トレセンの片隅、わずか4棟とこぢんまりした「北D」地区は、日々多くのカメラマンがスタンバイする〝お宝〟エリアでもエリアでもある。理由は至ってシンプル。ビッグレースの常連たる国枝栄&手塚貴久厩舎が、そのエリア中3棟で厩舎運営を行うからだ。今秋のGⅠ・10戦で2厩舎ともに参戦しなかったのはわずか3戦。つまり〝美浦の顔〟たるサラブレッドがそこには集結する。

それゆえ「北D」の運動場は、星(GⅠ制覇)や馬名入り(重賞勝ち)の特殊ゼッケンをつけた馬が日常的に闊歩しているのだが…。実は一般ゼッケンのため、気を付けないと見逃しそうな著名馬も隠れている。それが有馬記念に出走する〝最強の2勝馬〟カレンブーケドールだ。

「〝いつまで普通のゼッケンだよ〟って周りから言われるし、僕も早くタイトルを取らせたい気持ちでいっぱいです。決して名脇役じゃなく、主役を張れる力はあると思っているので」

熱く語るのは担当の中村雄貴助手。愛馬は厩舎でもアーモンドアイの隣に馬房を位置する〝妹分〟的な存在。それゆえ明と暗のコントラストも残酷なほど鮮明で、今回の鞍上交代(津村→池添)が必勝祈願たる采配なのは明白だろう。

「今年はアーモンドアイとドバイも一緒に行ったし、ジャパンCでは初めて一緒に走った。同じ時を過ごして、教えてもらったこともきっと何かあると思うんです。あの馬の代役は無理でも引退の穴を埋められたら…。たくましさが増した今はJC2着の昨年と比べても体つきが全然違うし、それだけの迫力は出てきましたからね」

有馬組でコロナ禍の影響を最大に受けたのは、おそらく春を棒に振った同馬だ。ならば大きなクリスマスプレゼントが最後にあっても、誰も不満の声を上げるまい。

「クロノジェネシスにはオークス以降2戦で先着されたけど、ともに渋い馬場。良馬場で負けるのはさすがに悔しいです。前走よりバランスや反応が良くなった今は、それくらいの気構えです」

これまでは太陽に照らされる月のような存在でも、大一番で狙うは「北D」地区の主役、悲願の特殊ゼッケンに他ならない。〝最強の2勝馬〟からの脱却ランに注目だ。

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