二審も原爆症認めず 福岡高裁棄却 長崎で被爆の2人

 長崎で被爆した県内の男性(79)と女性(83)が、原爆放射線で皮膚がんなどを発症したとして、国に原爆症認定を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(矢尾渉裁判長)は24日、一審長崎地裁で敗訴した2人の控訴を棄却した。
 原爆症認定を巡っては、最高裁が今年2月、経過観察中の被爆者が原爆症と認められるためには、「経過観察自体が治療に不可欠で、積極的な治療の一環と評価できる特別な事情が必要」との判断を示した。
 高裁はこの判例を踏まえ、男性の皮膚がんは切除後の再発や転移の可能性が低く、特別な事情はないと指摘。一審同様、原爆症申請時の「要医療性」を認めなかった。女性の症状についても、慢性肝炎ではなく生活習慣病による脂肪肝だとした一審判決を支持し、「放射線起因性」を否定した。
 判決を受け、2人は「苦しみを分かってもらえず、残念で悔しい」としたコメントを出した。福岡市内で会見した原告側の原章夫弁護士は「2人の救済の道を閉ざすもので、被害や苦しみを顧みないものだ」と批判。上告については「検討する」とした。
 原爆症認定の要件は「原爆放射線に起因したものであること(放射線起因性)」「現に医療が必要な状態であること(要医療性)」の二つ。認定されれば、月額14万1360円の「医療特別手当」が支給される。
 訴訟は被爆者5人が提訴。長崎地裁は昨年5月、このうち2人を原爆症と認め、3人の訴えを棄却。このうち2人が控訴していた。

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