長崎この1年2020<5> 銀行合併 コロナ危機共有で融和へ

合併記念セレモニーで撮影に応じる(左から)森頭取、中村法道知事、柴戸隆成FFG社長、吉澤俊介会長=10月1日、長崎市銅座町、十八親和銀行本店

 あちこちに競うように掲げられていた青い看板と緑の看板が10月1日、一斉に鮮やかなピンクに変わった。「街が明るくなる」「もう地元じゃ圧倒的な存在。そんな派手にアピールしなくても」。県の花ウンゼンツツジをイメージした企業カラーは、好みが割れつつインパクト十分だった。
 十八銀行と親和銀行が合併し、十八親和銀行が生まれた。ともに140年以上の歴史を刻み、それぞれ長崎市と佐世保市を拠点に県を二分して、しのぎを削ってきた。独占禁止法を巡る公正取引委員会との難交渉を経て、十八が昨年4月、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)に傘下入り。経営統合発表から両行合併まで4年半を要した。
 積年のライバル同士が融和できるのか-は大きな関心の一つ。これから合理化で店舗数を絞り、支店長ポストは減る。今年再ブレイクしたテレビドラマ「半沢直樹」まではいかずとも、出身行による争いを予見する向きもある。しかし、新型コロナウイルス禍はそれを許さない。
 十八親和は感染拡大の影響を受けた約5千社に計1千億円を融資、約600社の返済猶予に応じた。合併前から両行員が手分けして全取引先の訪問を重ね、実態の把握と対応に奔走。年明け早々の事務システム統合に向けた集合研修はできなくなり、行員はリモート(遠隔)も活用し日程を圧縮してこなした。
 「コロナ危機があったからこそ一層一つにまとまれた」。森拓二郎頭取は長崎大水害があった38年前とは隔世の感を覚える。当時、十八と親和は被災地支援の名の下に融資拡大を競った。
 システム統合後は店舗統合、さらに、これらで捻出した人材を地域にどう還流するか、というステージに移る。コロナ不況にあえぐ企業に対し、資金繰り支援はあくまで急場しのぎ。返済も始まる中、売り上げ回復に向けたサポートが欠かせない。「大きくなった銀行は零細事業者を見捨てないか」。そうした懸念の声は森頭取に届いている。「杞憂(きゆう)だと納得していただくには実績を積み上げるほかない」


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