ノーベル経済学賞受賞者が参加したファンドはなぜ破綻したか?失敗しないための投資の心構え

「ケインズの美人投票」で取り上げた経済学者のケインズですが、実は株式投資で大損をしていたそうです。結局、経済学的な観点から株式投資を論じてもうまくいかなかったのです。

また、ノーベル経済学賞を受賞した研究者を集め、金融工学を駆使して大きく収益を上げたヘッジファンドが、その後破綻したという例もあります。投資、投機の世界はこんなにも一筋縄ではいかないものです。


思惑が外れたときにどのように対処するか

そういう筆者も何度も大きな損失を被ったこともあります。口では百戦百勝と言っても、何度も躓きながら投資をしています。自分の考えているように相場は動かない、逆に自分の思うように動いてくれることは少ないと考えた方がいいかもしれません。

だからといって、サイコロを振って運を天に任せて投資をしても、そう簡単に儲けられるほど相場の神様は甘くはありません。努力をすればいいのかというとそうでもなく、勉強してもダメなときはダメなのです。

では、我々は何をすればいいのでしょうか。相場に立ち向かうのではなく、相場にうまく乗るということです。当たり前といえば当たり前のことですし、それができれば苦労はしません。

そして、相場でうまく利益を上げていくのに大切なのは、「損をしない」ということに加えて、「損をいかに小さくするか」ということです。自分の思惑が外れたとき、「相場が間違っているんだ」と自分の思惑、考えに固執していると、どんどん状況は悪化します。身動きが取れなくなってしまいます。

「もう」や「まだ」を見切ることが大切

相場格言をいつも紹介していますが、「もうはまだなり、まだはもうなり」という禅問答のような格言もあります。この「もう」いいだろう、「まだ」いいだろうと甘く考えていると、大きな怪我につながります。

よくあるパターンとしては、買った株が下がってしまったとき。最初は「まだ」大丈夫だろうと考え、それでもさらに下落が続くと「もう」いいだろうという考えを変えてしまいます。そして、前回記事で述べたように、あまり意味のない、逆に損失を拡大させるような「難平」(ナンピン)をして、大失敗をしてしまったりします。

逆に買った株が下がってしまった場合、「まだまだ下がりそうだ」と冷静に考えられることが大切です。つまり、自分が「もういいだろう」と買ったものが、「まだ」買い場でなかったということを認識しましょう。

自分の思惑が違っていたわけなので、すぐに損をしてでも手放すことが正解です。実際に、下落の始まりを押し目と勘違いし、買ってしまったときにこういう事態が起きます。

ノーベル賞研究者はなぜ失敗したか

では、先に挙げたノーベル賞受賞者や金融工学を駆使したファンドは、なぜ破綻したのでしょうか。このファンドでは、しっかりと「もう」と「まだ」が使えていたのですが、「レバレッジ」を効かせすぎたことで、耐えられる損失を見誤り、破綻に至ったのです。

要は、資金管理がうまく行かなかったことが破綻の原因でした。投資した資金とリスクのバランスの崩れが予想以上であったことが、決定的なダメージとなったのです。

こうした資金管理の失敗は誰もが経験をすることです。信用取引や先物などのデリバティブ(派生商品)の取引などのようにレバレッジが大きい取引ほど、失敗の際に損失が大きくなります。往々にして利益ばかりに目が行って、リスクの大きさに目が行き届かないということが起きます。

こうした失敗をしないためには、身の丈にあった投資を心掛け、リスクとリターンのバランスに常に気を付けておく必要があります。投資に使うお金はレバレッジを効かせる場合でもあくまでも「余裕資金」の範囲で行うことが大切です。

自分の誤りを認められなかった苦い経験

そしてそのためには、「もういいだろう」と思ったら、少し待ってから資金を投入すること。「まだ大丈夫だろう」と思うところの一歩前で手を引くこと。投資の世界に「今でしょっ!!」というような言葉は無用で、常に余裕をもって投資をする姿勢が重要です。

実は私も、「もう」と「まだ」を取り違えて、大きく損失を出したこともあります。2017年の9月から11月にかけて、日経平均が19,200円から23,000円台までほとんど休みなく上昇した時期のことです。

当初は「2万円は超えないだろう」と思っていたものが2万円を超え、結果的に見るとまだまだ上昇しました。しかし、私は「もういいだろう」と下がると利益が出るようなポジションを取ってしまったのです。

その後、2万1000円を超えたところでもさすがに「もういいだろう」と思い、2万2000円を超えてもさらに「もういいだろう」と自分に言い聞かせました。結果的に大きな損失となりました。

自戒を込めて言えば、どこかで自分の思惑の誤りに気が付き、見切ることが大切だったのです。

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