決して懐メロにならない80年代 J-POP、時代を超えた究極のエヴァーグリーン 2020年 11月27日 タワレコ選曲によるコンピレーションアルバム「Love 80's -Ultimate J-POP Best」がリリースされた日

80年代に形成された音楽シーンの礎

70年代から80年代へ。歌謡界を含む日本の音楽シーンの変革について、大きな要素は2つあります。ひとつは、職業作家に代わって現役ミュージシャンが楽曲を積極的に提供するようになったこと。もうひとつは、70年代終わり頃ニューミュージックと呼ばれた、叙情派フォークを源とするドメスティックな音楽性が昇華し、シティポップをはじめとする様性が花開いたことです。

つまり、それまで主流だった歌謡曲やフォークといった垣根がなくなり、眼を見張るようなクオリティの高い楽曲が次々とリリースされていきました。そして、様々な音楽が、当時マイナーなイメージすらあったロックという音楽にも寄り添っていった “時代の転換期” だとも言えるでしょう。

そして80年代は、のちにデジタルサウンドの台頭で、ミリオンセラーが連発される90年代への礎が固められた時代でもあります。今の音楽シーンの礎は、80年代に形成されたと言っても過言ではないでしょう。

タワーレコード選曲のコンピ「Love 80's -Ultimate J-POP Best」

この度、タワーレコードの『♡80’sキャンペーン』にちなみ、限定盤としてリリースされた『Love 80's -Ultimate J-POP Best』は、そんな80年代を総括しながら、時代が変わっても色褪せないエバーグリーンな名曲をセレクト。全33曲、2枚組に真空パックした究極のコンピレーションです。

収録されているアーティスをいくつか挙げてみると、シーナ&ロケッツ、THE TIMERS、レベッカ、松田聖子、TM NETWORK、佐野元春、ラッツ&スター、中山美穂、YELLOW MAGIC ORCHESTRA… と、ジャンルは多岐に渡ります。そう、このコンピレーションには、80年代の邦楽シーンのすべてが詰まっていると言っていいでしょう。

さて、Disc1から聴いていくと、まず、鮎川誠がレスポールで奏でるぶっとい音に誘われるかのようにシーナのキャンディボイスが響き渡る名曲「レモンティ」が炸裂します。そして、これに続くのは松田聖子の「Rock’n Rouge」。

これは、ロックが本来持つ、ダーティでワイルドなイメージを内包しながらも、ロックンロールの楽しさを十二分に教えてくれるシナロケのプレイが80年代への架け橋となり、そこにアイドルからの脱皮を図った松田聖子の50'sテイストな楽曲が続きます。そこには何の違和感もないことが分かります。そう、これが80年代の音楽シーンなのです。

今も色褪せない瑞々しさ、エバーグリーンな輝き

そして、佐野元春、TM NETWORK、ラッツ&スターと続くEPIC勢の音を聴くと、80年代に細分化されたそれぞれのジャンルの奥深さを実感することができます。

ロックンロールが本来持ち合わせた衝動をソフィスケートして、若者たちのアンセム「ガラスのジェネレーション」を作り上げた佐野元春。そして、50年代、60年代のドゥーワップを昇華させて、お茶の間に届けたラッツ&スター。どちらも原点回帰的な手法を80年代に開花させた先人でもあります。

他にも、安田成美、薬師丸ひろ子、原田知世、中山美穂といった、80年代を代表する女優にして、歌手としてもヒットを連発した彼女たちの歌声からも歌謡曲の深化を感じ取ることができます。

それは、彼女たちが、シンガーとして、表現者として、いかに素晴らしい才能を持っているか… という表れでもあります。また同時に、楽曲提供者であるミュージシャンたちと真摯に向き合い、いかにしてクオリティの高い作品を作り出すことに努めていたかも一目瞭然です。彼女たちの楽曲には30年以上経った今でも色褪せない瑞々しさ… エバーグリーンな輝きがあるのです。

決して懐メロではない!未来へと繋がる心の起点

80年代における激動の音楽シーンを俯瞰できるのも、このコンピレーションの魅力のひとつでもあります。たとえば、当時一世を風靡したユーロビートをカバーしたBabeや石井明美に胸アツになるのは必至です。

他にも、ハウンド・ドッグ「ff(フォルテシモ)」や大沢誉志幸「そして僕は途方にくれる」などCMソング(どちらも日清カップヌードルのCMでしたね)としてもお馴染みの楽曲を改めて聴き直せば、80年代という、なんとも潤沢な時代を回顧することもできるでしょう。

しかし、それは物質的な潤いだけではなく、音楽が今より身近にあっかたらこそ成し得た “心の贅沢” なのかもしれません。80年代とは、ひと言で表せられない多様性があったことに気づくことでしょう。そしてそれは、私たちの日常の様々なシーンにおいて欠かせない存在であったことが分かります。

『Love 80's -Ultimate J-POP Best』に収録されている楽曲は、80年代という大きな地図を作り上げるためのピースだと考えてください。ひとつひとつの楽曲から思い出す情景をはめ込んでいくと、あなただけの絵が完成するはずです。

何かとキツいことが多い年になってしまった2020年。しかし、だからこそ、このコンピレーションを手にとって80年代に思いを馳せてみてください。収録されている楽曲が決して懐メロではなく、未来へと繋がる心の起点として存在していることが分かるはずです。

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カタリベ: 本田隆

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