<社説>20年回顧・新型コロナ 国の迷走が混乱招いた

 2020年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が社会や個人の生活を一変させた。 世界各地でロックダウン(都市封鎖)を繰り返し、経済活動は停滞している。命を守るため、県内の医療現場ではぎりぎりの取り組みが続いている。観光が牽引(けんいん)してきた県経済は急速に冷え込み、教育現場は休校の長期化などに翻弄(ほんろう)された。東京五輪・パラリンピックは延期となり、自粛の影響は県内各地の伝統行事にまで及ぶ。

 未知のウイルスに対し、各国のリーダーは危機管理の資質が問われた。その中で日本政府の打つ手は後手に回り、備えの甘さを露呈した。

 2月27日に安倍晋三首相(当時)が全国一斉に臨時休校を要請する考えを表明したが、突然の発表に共働き家庭や教員らは準備が整わず、対応に追われた。4月に新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を全国に出したが、経済活動の自粛要請と営業補償がセットではないため事業者の経営難が深まり、感染対策の徹底にも課題を残した。

 家計への現金給付を巡っても、減収世帯を対象とした方式が不興を買うと、一律1人10万円給付に方針転換するなど迷走した。全国約5千万世帯に布マスク2枚を配る「アベノマスク」は、税金無駄遣いの批判を免れなかった。

 安倍政権後継の菅義偉首相は、「第3波」が広がる中でも肝いりの「Go To トラベル」の継続にこだわった。だが結局は、全国で医療崩壊を招く危機が高まり、年末年始のGo To停止に追い込まれた。

 感染対策と経済の両立に固執する余り、矛盾をはらんだ政策や泥縄式の対応で事態の悪化を招いている。

 県内では2度の緊急事態宣言によって国際通りから観光客が消えた。多くの観光客を呼び込むことで経済の成長を促してきたが、離島の限られた医療資源が逼迫(ひっぱく)する恐れがあり、玉城デニー知事らが来県・来島の自粛を呼び掛けざるを得なかった。

 空港・港湾における水際防疫体制の不十分さなど、県の危機管理にも多くの課題が突きつけられた。観光に依存した経済の在り方も捉え直していく必要があるだろう。

 7月には在沖米軍関係者の感染が急増し、県民に不安を広げた。日米地位協定により日本の防疫措置が及ばない「ブラックボックス」の存在が浮き彫りになった。

 1年にわたる社会・経済活動の停滞がダメージとなって蓄積しており、廃業や失業による困窮、自粛・休校に伴う孤立を防がなければならない。非正規労働者、女性、学生・子どもなど、社会的に弱い立場の人がさらに追い込まれてしまう懸念がある。

 未曽有のコロナ禍が続く中で、政府が優先することは公助を厚くし、格差を広げないことだ。苦境を支え合い、手を差し伸べていきたい。

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