今の韓国がG7に招かれる資格はない|西岡力 「金与正法」を制定した文在寅政権。2021年の先進7カ国(G7)議長国である英国のジョンソン首相は、インド、オーストラリア、韓国をG7サミットにゲストとして招くと発表したが、独裁政権を助け、その片棒を担ぐ文政権をサミットに呼ぶなど言語道断だ!

文在寅政権下の韓国は、自由民主主義国連合に入る資格があるのか。

来年の先進7カ国(G7)議長国である英国のジョンソン首相は、インド、オーストラリア、韓国をG7サミットにゲストとして招くと発表した。英政府は声明で「共有する利益を推進し共通の課題に取り組むため、志を同じくする民主主義国家と協力していく」と説明した。英政府は中国に対抗し、G7にこの3カ国を加えた民主主義10カ国で協力する「D10」構想を持っている。

米国でも民主主義国家の団結を求めている。バイデン次期大統領は就任1年目に民主主義サミットを開くと表明している。どの国を招くのかを明らかにしていないが、中国やロシアに対抗するための会議であることは明らかだ。

民主主義に反する対北ビラ禁止法

韓国は伝統的な米国の同盟国だ。朝鮮戦争では韓国の自由民主主義を守るために約4万人の米兵が犠牲になった。現在韓国は1人当たり国内総生産(GDP)が3万ドルを超える経済先進国だから、その面では自由民主主義を守る先進国のグループに入る資格があると言えるだろう。

ところが、韓国国会が12月14日、北朝鮮へ風船でビラを飛ばすことを禁ずる法律(改正南北関係発展法)を成立させたことで、文在寅政権下の韓国は自由民主国家と言えるのかという疑問の声が上がっている。米下院の超党派議員で構成する「トム・ラントス人権委員会」は来年1月にこの問題で公聴会を開く予定と報じられた。国連北朝鮮人権調査官も批判的立場を表明した。

12月16日、韓国の康京和外相は「表現の自由は極めて重要なものだが、絶対的な権利ではない」「対北朝鮮ビラ散布が国民の命と安全を脅かす場合に限って制限される」と語った。ビラの散布に対して北朝鮮が軍事攻撃を加える恐れがあるという弁明だ。韓国統一省は「民意の代表機関である国会で、憲法と法律が定めた手続きにより民主的議論と審議を通じて法律を改正した」として、同法が民主的だと開き直った。

独裁政権を手助け

しかし、禁止されたのは軍事境界線付近での対北ビラ散布だけでない。印刷物などの物品や、金銭その他の財産上の利益を北朝鮮に送ることも禁止対象に含まれる。許可なしで中朝国境を通して韓国のドラマや音楽を入れたUSBメモリーを北朝鮮に搬入することや、第三国で北朝鮮人に物を渡すことも処罰される。多くの脱北者が北朝鮮にいる家族に金銭支援をしていることも処罰の対象になり得る。

独裁体制下で抑圧されている北朝鮮住民に外部から情報を伝えることを処罰するという同法は独裁政権を助けるもので、自由民主主義に反することは明白だ。韓国政府は、北朝鮮の独裁者の妹金与正氏がビラ批判をした直後に同法制定を約束した。だから同法は金与正法と呼ばれている。多数決によって全体主義体制を作り上げたナチスドイツを見れば分かるように、民主主義を単なる手続きで守ることはできない。今のままの韓国を自由民主主義勢力の一員としてサミットに呼ぶことに強い疑問を感じざるを得ない。(2020.12.21 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

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