藤波辰巳「ドラゴン・スープレックス」入場曲にもなった不滅の大技! 1985年 12月12日 プロレスラー藤波辰巳がアントニオ猪木から初めてフォールを奪った日

真矢ミキ主演ドラマ「さくらの親子丼」に出演した藤波辰爾

真矢ミキ主演のドラマ『さくらの親子丼』。古本屋の女主人が、行き場の無い人に親子丼を作って食べさせ、そして励ますという何とも心温まるストーリー。そこで出される親子丼が美味そうで、美味そうで、ついつい翌日の昼には茅場町の鳥専門店で食してしまう。「真矢さんに作ってもらったら、もっと美味いのだろうか」という妄想も味を引き立てることは間違いない。

そうそう、親子丼の話ではなく、古本屋の話。真矢さん演じるさくらはどうもプロレス好きらしい。“親子丼無料” につられてやってきた、態度の悪いヤンキーたちと乱闘になると、なんと “ドラゴン・スリーパー(飛龍裸絞)” を繰り出しているではないか。そして部屋の中には、炎の飛竜・藤波辰巳(現・藤波辰爾)のポスターが!(藤波はドラマの五杯目に出演した)Re:minderプロレス担当の私としては、ついついこの原稿を書きたくなってしまった。

レスラー藤波辰巳のニックネームは “ドラゴン”

70年代後半に、ドラゴンブーム(あのブルース・リーや倉田保昭の作ったブームとは異なる。念のため)を巻き起こした藤波は、とっても幸せなレスラーだ。ニックネームである “ドラゴン” が技の名前に付いてしまうからだ。

たとえば “ドラゴンロケット”。これは、メキシコ伝統のプロレス、ルチャ・リブレを代表する飛び技 “トペ” のことだが、藤波が繰り出した瞬間に “ロケット” となる(古館さんの命名か?)。ほかにもワンハンド・バックブリーカーを “ドラゴン・バックブリーカー” と呼んでいたし、“ドラゴン・スクリュー” や、前述したオリジナルの絞め技 “ドラゴン・スリーパー” などは藤波の専売特許。

このように自分の名が技の名につくのは、藤波と交代するようにジュニアヘビー級戦線に登場したタイガーマスク(初代)ぐらいではないだろうか?

ちなみに “ラリアート(Re:minderでは敢えて80年代初期の表現を使用)” は、使い手によってリキ・ラリアート(長州力)、ラッシング・ラリアート(ラッシャー木村)、ジャンボ・ラリアート(ジャンボ鶴田)などと呼ばれたが、これらは同じ技でもあり、いくつもの “ドラゴン” 名義があった藤波とは比べることはできない。

入場曲タイトルにもなった大技 “ドラゴン・スープレックス”

その中で、最もインパクトが強かったのが “ドラゴン・スープレックス”。これは、相手を背後からフルネルソンで捕え、そのまま後方に反り投げてブリッジしながらフォールするというというもので、相手はフォールされるというよりも、そのままギブアップもしくは失神KOの恐怖を味わう。まさに危険極まりない大技だ。

1978年1月、ニューヨークで行われたWWWFジュニアヘビー級選手権で初披露したが、「練習もしていない。咄嗟に出た」ということらしく、当然ながら名無しの技だった。そのため、試合後のインタビューで本人が慌てて命名したようだ。つまり、“ドラゴン名義の技” のきっかけは自身で作ったというわけだ。

この戴冠は藤波を一気にスターダムに押し上げた。そしてドラゴン・スープレックスは、藤波スペシャルとしてファンが期待する大技となり、オリジナル入場曲のタイトルともなった。この曲は、絶頂期を迎えた80年代のプロレスシーンには欠かせない名曲として、特に深い印象を残している。

アントニオ猪木にフォール勝ち!フィニッシュはドラゴン・スープレックス

ただし、技のほうはというと、藤波がヘビー級に転向して以降、あまり見ることができなくなってしまう。ヘビー級の背の高い、しかも重い選手を投げるには、ちょっと藤波は小柄すぎるのだ(といっても当時の身長は公称186㎝だったので、日本人としては十分デカいのだが…)。

一方で、「あまりに危険なので禁じ手となった」という話もあったが、実際にはデカい外国人レスラーを投げることも難しかったのではないかと推測される。

そんな事情のためか、80年代後半になると、入場曲「ドラゴン・スープレックス」に代わって、ほかの曲も使われたようだが、新日本プロレスが最も華やかだった時代の曲ということで、私自身はこの曲を推したい。

1985年12月12日。この日は、藤波にとってエポックメイキングとなった日だ。タッグ戦とはいえ、師匠のアントニオ猪木にフォール勝ちしたのだ。フィニッシュはもちろんドラゴン・スープレックス。デカい外国人レスラーでは危険だが、受け身も上手な猪木であればこその大団円。数年の間、繰り出すことのなかった大技を、師匠のために取っておいた、そんな印象を受けたフォールだった。

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※2017年11月3日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 小山眞史

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