マラドーナ監督「集合写真NO!」の真相はダイエットだった

ダイエットに成功したマラドーナ監督(2010年7月)

【本紙が密着!南アW杯で見たマラドーナ監督のお騒がせ伝説(1)】サッカーの元アルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナ氏が60歳で急死し、世界に大きな波紋が広がった。選手として数々の栄光をつかんだ一方、ピッチ外ではトラブルが絶えなかったスーパースターだが、本紙は同国代表監督として2010年南アフリカW杯に臨んだマラドーナ氏に密着。当時の奮闘ぶりを振り返る連載の第1回ではお騒がせ監督の意外なこだわりに迫った。

2008年10月、マラドーナは待望の代表監督に就任。苦しみながらもW杯南米予選を突破すると、本大会直前に決戦地の南アフリカに入った。全選手、スタッフが顔を揃え、集合写真を撮ることになっていたのだが、マラドーナ監督は「NO」と言うばかりで、しばらくの間、撮影に難色を示していたという。

指揮官が撮影を拒否していた理由は、オーダーメードしたチームジャージーが届ていなかったためだ。実はファッションにも、こだわる指揮官はジャージーといえども既製品を嫌い、事前に採寸し、自身の体系に合った専用のウエアを注文。ところが、W杯本番前に約1か月で15キロのダイエットに成功し、すっかりスリムになり、事前に計測した数値と大きく変わってしまったのだ。

実は、世界中のメディアが注目するW杯に臨むにあたって写真やテレビ映りなど、メディアへの露出を意識し、体を絞ったのだという。ただ、撮影の期日が迫る中、ようやく特注ジャージーが到着。マラドーナ監督はド真ん中に陣取り、笑顔で収まったが、普段の過激な言動の半面、意外に繊細な面もあったようだ。

そんな指揮官はチーム内にも厳格なルールを設定した。W杯に向けて掲げた「かなうと信じて夢を見ろ。そうすれば実現できる」というスローガンが書かれた紙を宿舎内の食堂、廊下、エレベーターに掲出。さらに米国航空宇宙局(NASA)が手掛けた特製テンピュールの枕を購入させ、食事に注文を付け、パスタソースとデザートは常時3種類用意することを求めた。監督室には特別装備として、洗浄機付き高給便座を2つも設置させ、自室の鏡も備え付けのものから、高級なものに変更させた。

また、大会規定で、まれにある15分間の公開練習では自国メディアに対して手荷物検査を実施。それ自体は珍しいことではないが、施設への入場時だけではなく、退場の際も徹底チェックを行った。ちなみに検査導入を決めたマラドーナ監督が語った理由は「誰かがチームの備品を盗むかもしれない」からだそうだ。

(続く)

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