年間ベスト、2020 Caroline Japan ベスト・ソング・レビュー vol.3

恒例のCaroline Japan スタッフが選ぶ【2020 Caroline Japan ベスト・ソング・レビュー 】の vol.3が発表された。

世界中がカオティックな雰囲気に包まれつつも身動きが取れない、というクレイジーな状況が続いている2020年も、残すところあとわずか。不安や希望が入り混じる中、今年もたくさんのリリースがあった。生活の変化から在宅や遠隔で制作を行うミュージシャンも増え、新たな流れが音楽業界に広まったと思う。
そして今も、この状況下で何ができるか試行錯誤を繰り返し、止ることのない音楽の力を実感している方も多いのでは。

変動に満ちた今年一年を振り返り、Caroline Japan スタッフがCarolineからのリリース、 そしてオールジャンルからベストソングをセレクト、コメントと共に紹介するこのシリーズ、2020年締め括りはスペシャルゲスト「All Digital Music」編集長のジェイ・コウガミ氏が担当。

★ Special Guest:ジェイ・コウガミ

音楽ビジネス/エンタメテクノロジーメディア「All Digital Music」編集長

【Caroline TOP 5 Songs】 (順不同)

【Caroline TOP 5 Songs】は、こちらのYouTubeプレイリストからまとめてチェック。

■ Internet Money “Lemonade”  試聴

2020年最大の世界的ヒットをTIkTokとストリーミングで生んだのは、カリフォルニアのインディー・ヒップホップ・プロデューサー集団/レーベル/マネジメント会社のInternet Money。XXXTentacionやTrippie Redd、Iann Dior(同じくCarolineからリリース)、Juice WLRD、Lil Uzi Vert、6IX9NE、Lil Tecca、Post Maloneなど、現代ヒップホップ界で数多くの楽曲を手掛ける、Taz Taylor、Nick Miraら若手プロデューサーが仕掛け人。そんな彼らも、わずか数年前までタイプビートを売ってビジネス資金を集めていたことを考えれば、10代が彼らに憧れる理由もよく分かる。どんなに売れても、ビートメイキングのチュートリアル動画や、タイプビートの公開視聴をライブ配信する敷居の低さも魅力の一つだろう。

■ Wejdene “Anissa”  Spotifyで試聴Apple Musicで試聴

フランス出身で、2020年にストリーミングで急上昇中の若手ブレイキングアーティスト。5月リリースの「Anissa」や「Coco」がバイラルヒットをTikTok発の新世代。ジャンルでいうなら「Etherpop」「Francoton」、R&Bとアフロビートをポップに仕上げた艶やかな曲が並ぶ。「Mad at Disney」でブレイクしたSalem ileseと並び、Carolineで期待値高めな2004年生まれ。

■ Night Lovell “Alone”   Spotifyで試聴Apple Musicで試聴

10代からインディペンデントで活動を続ける、カナダ・オタワ出身のヒップホップアーティスト、Night LovellことShermar Paul。Complexからは「カナダ最大のアンダーグラウンド・アーティスト」と称されるほどの存在。

■ WizTheMc “Lied”  Spotifyで試聴Apple Musicで試聴

2021年、期待が高まる1999年生まれの多彩すぎるインディペンデント・アーティスト。南アフリカ出身、ドイツ在住だが、既に世界でも聴かれ始めている。海外で注目集まって間もない気鋭アーティストとの契約が増えたところも、ここ最近のCarolineでは面白い。

■ Christine and the Queens ”People, I’ve been sad” 試聴する

「2020年のアンセム」と称された一曲。孤独や別れに打ち勝つための連帯感を詩的な歌詞で表現した同曲。本来は、自身の心情を描いた曲として、パンデミック前の2月リリースされたが、3月以降、今年の世界危機に立ち向かうグローバル・アンセムとなった。

【All Genre TOP 5 Songs】(順不同)

【All Genre TOP 5 Songs】は、こちらのYouTubeプレイリストからまとめてチェック。

■ Sault “Fearless”

SNSにもメディアにも出ない、正体を隠した謎のUKアーティスト、SAULTの 『Untitled (Rise)』は、今年最高のアルバムの一つだった。BLM運動を発端に広がっ様々な社会・人種・文化問題への抗議活動と見事にシンクロ。『Untitled (Black Is)』と併せて、SAULTの今年2作は、現代で最も重要なコンセプト・アルバム。

■ Lous and the Yakuza “Dilemme”

コンゴ生まれのベルギーのアーティスト。日本的な名前もですが、動画のビジュアルも非常に印象的。アーティスト名のYakuzaは日本文化とヤクザから取ったそうで、家族に忠実で、お互いを信頼することの価値に共感し、「注目が当たらない全ての私のコラボレーター」を指しているとのこと。

■ Omar Apollo “I’m Amazing”

メキシコ移民のDIYアーティスト、オマー・アポロ。2020年の『Apolonio』に集約された、バイリンガル・ポップなR&Bフュージョン・サウンド。ヒップホップ、lofi、オルタナティブを横断するboy pabloやDominic Fike、The Internet、Blackbearが好きな方は是非。

■ Lady Blackbird “Blackbird”

ロサンゼルス出身のジャズ/ソウルシンガー。Nina Simoneの「Blackbird」のカバー曲で今年デビューしたインディーアーティストで、音楽性、歌詞、タイミング的にも今年重要なコンテクストを紡いだ一曲。

■ India Jordan “For You”

UKでプロデューサーのIndia JordanのEPは、新型コロナで活動が停止したクラブミュージックを取り巻いてきた高揚感や自己表現の復活を前向きに期待させてくれる。プロデュース力の評価が上昇中のIndia Jordanに注目してみては?

■ Profile

ジェイ・コウガミ

音楽ビジネス、エンタテインメント・テクノロジー専門のニュースメディア「All Digital Music」編集長。音楽専門のマーケティング会社Music Allyの日本事業展開およびコンテンツ運営担当。これまで「Real Sound」「WIRED.jp」などメディアでの執筆や、国内から海外まで多地域での取材に多数携わりつつ、日本のレーベルやマネジメントのデジタル戦略、海外戦略を支援する。

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