やはり難しい、新型コロナとの共存 第3波に襲われる韓国で考える【世界から】

新型コロナウイルスの感染再拡大後、活気を失ったソウルの中心街・明洞=20日(聯合=共同)

 新型コロナウイルスの「第3波」が韓国で日を追うごとに拡大している。12月20日には新規感染者数が韓国全土で1097人を記録。これまでの過去最多を更新した。また、累計の感染者数も5万人を突破した。

 現在確認されている感染者は、大多数がソウルと周辺地域にとどまっている。だが、地方への感染拡大や医療崩壊を懸念する声は日増しに強くなっている。年越しを目の前にして、国民の多くが不安に襲われている韓国の様子を伝える。(釜山在住ジャーナリスト、共同通信特約=原美和子)

 ▽感染拡大収まらず

 韓国では11月中旬まで、国内全体での感染者数が多い日でも50人前後という低水準で推移していた。感染の抑え込みに成功していたといっていい。ところが、下旬に入るとソウルとその首都圏を中心に感染者の増加が目立ち始めた。特に12月3日には日本の大学入試センター試験に相当する「大学修学能力試験」を控えていた。厳しい受験競争で知られる韓国だけあって、試験への影響を最小限に抑えるために対策が強化された。

 具体的には次の通り。①小学校から高校までの授業をオンラインで行う②飲食店では午後9時以降の店内飲食が禁止される。また、カフェでは終日店内での飲食ができず、持ち帰りか配達のみとなる―などだ。

 大学修学能力試験は無事に終わったものの、感染拡大の勢いはその後も収まる様子はない。それどころか、さらに加速している。第3波の特徴として挙げられるのは「感染経路が不明な感染者が多いこと」に加え「若年層の無症状感染者も増加傾向にあること」である。

入店する客に検温の協力を求めるデパートのスタッフ=韓国・釜山市、原美和子撮影

 ▽対策はしているが…

 韓国で第1波が始まったのは今年2月であった。この時は、第3の都市・大邱(テグ)を中心に感染が急増したが、「動線」と呼ばれる感染者の詳しい行動履歴を該当地域の住民たちに逐一通知することで、注意喚起するとともに検査を受けるよう促した。同時にマスク着用や衛生管理の徹底も呼び掛けた。学校のオンライン授業の整備なども含めた韓国政府の対策は「K防疫」と呼ばれ、注目された。

 しかし、今回の第3波ではこうした対策の効果がまるで現れない。一日の感染者数が最多記録を更新するなど感染者数増は収まる気配がない。さらに、これまでは起きていなかった首都圏の医療提供体制の切迫が始めているとされており、国民の中には不安が広がっている。

 政府が対応に苦慮している中、ソウルや釜山といった大都市では臨時のPCR検査場を急きょ設置。感染拡大、中でも市中感染を何とか食い止めようとしている。

釜山市内の病院に設けられているPCR検査場=原美和子撮影

 ▽我慢の限界?

 だが、現実は政府の思惑通りには行っていない。代表的なのが観光だ。政府も会食や旅行での移動を控えるように絶えず呼びかけてきたが、各地の観光地は旅行を楽しむ観光客でにぎわっている。

 国際線がほぼ運休状態となっている格安航空会社(LCC)は苦肉の策として、人気観光地の済州島や日本上空を飛行する遊覧飛行プランを新たに設けた。さらに、破格の料金で国内線のチケット販売を始めている。例えば、釜山を拠点としているエアプサンでは、釜山―ソウルを片道1万9千ウォン(約1900円)という驚きの料金で提供している。

 年末にかけては済州島だけでなく江原道(カンウォンド)のスキーリゾートなども予約で一杯であるという。これに対して政府関係者は「嘆かわしい」とコメントするなど、国民に自制を強く呼びかけている。

 マスク着用の義務化や飲食店やデパート、映画館など遊興施設へ入場する際の検温など感染防止の取り組みは継続して行われており、国民も一応は従っている。だが、本音は違うようだ。国民の多くがイベントや外出、旅行などを自主的に自粛するのは「これ以上、無理」と考えていると筆者は感じる。

 新型コロナウイルスの全容はいまだ解明されたとは言えない。世界各地で感染が再び拡大している。これまでよりはるかに強い感染力を持つ変異種も登場している。ワクチンは開発されたものの、世界中の人に接種できるようになるまでには長い時間がかかることは間違いない。このような状況で最善の感染防止策とは一体何なのか? 難しい問いだが、正解がないということは確実に言える。

 「新型コロナとの共存」はやはり簡単なことではなさそうだ。

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