オールスター決戦たる第65回有馬記念(27日=中山芝内2500メートル)は、ファン投票1位のクロノジェネシス(牝4・斉藤崇)が1番人気に堂々と応えて快勝。宝塚記念に続くグランプリダブル制覇で、ポスト・アーモンドアイ時代の主役を高らかにアピールした。その座を確かなものにするために陣営が来年にらむのは、今年の3冠馬2頭との直接対決、そして未知なる強敵との戦いというチャンピオンロードだ。
古馬トップクラスが集結した今年の有馬記念の立ち位置は、紛れもなく「ポスト・アーモンドアイを巡る最終決戦」。ゆえにファン投票第1位クロノジェネシスの勝利には、宝塚記念に続くグランプリダブル制覇にとどまらない重みがある。今年のJRAの牡牝&古馬混合平地芝GⅠ10戦で9度目の牝馬V。それは来年の競馬シーンをリードする新たな女帝の誕生でもあった。
「プラス10キロでも太め感はなかったし、装鞍所からパドックまで落ち着いていて雰囲気がすごく良かった」
斉藤崇調教師がレース前に感じたように、最大の勝因は強化されたメンタルに尽きよう。レースは最初の100メートルを過ぎてからの道中の最速ラップが11秒8、最遅で12秒9というペース。馬の持ち味を生かすも殺すも、鞍上の立ち回り次第という流れだった。そこにあって落ち着いていたのは馬だけではなかった。
「自分のリズム、自分のバランスで走れる位置がベストのポジションだと思っていた」
この言葉通り、後方の12番手でも慌てず騒がず運んだ北村友の手綱さばきも当然、評価されてしかるべきだろう。道中はフィエールマン、カレンブーケドール、ラッキーライラックの人気勢を終始前に見る形。「どこかでポジションを押し上げようかと考えたが、それも一瞬だった」(北村友)。この判断が後半の爆発力へとつながっていく。
勢い良く4角を回り、直線は早めに先頭に立ったフィエールマンと一騎打ちムード。これをねじ伏せたゴール寸前、2着サラキアが猛然と追い込んできたが「外から何か来てるなと感じたが、差されるとはまったく思っていなかった」。
いわば着差(クビ)以上の完勝劇。ゆえに頂上決戦を制した人馬が早くも意識するのは、来季確実に待ち受ける若き3冠馬2頭との直接対決だった。
「もちろん(2頭には)負けたくないし、来年も主役でありたい。今日はいつものクロノらしく、いつもの自分らしく競馬ができた。大きな壁を乗り越えたんじゃないかと思います」
鞍上の言葉、手応えに負けじと、斉藤崇調教師も力強くさらなる飛躍の誓いを口にする。
「今年は春、冬のグランプリを勝てたが、来年はもっと大きなレースへ行きたい気持ちもある。この馬と一緒に厩舎も成長していけたら。もっともっといろんな夢を見せてもらえたら」
コロナ禍の真っただ中ゆえ口には出さずとも、おそらく描くのは凱旋門賞を筆頭にした海外進出。日本のエースから世界のエースへ――。陣営が静かに待つのは、夢を大きく膨らませた女王の新たな幕開けである。