常勝ソフトバンク 強さの裏に「究極の三軍制」あり! 三笠GMが語る育成法とその先の夢

ソフトバンク・三笠杉彦GM

最強・鷹は歩みを止めない。日本一4連覇を果たしたソフトバンクの三笠杉彦GM(46)がオンラインインタビューに応じ、強さの象徴である育成システムについて、さらには球団が目指す未来への展望を語った。スローガンで掲げる「目指せ世界一」の夢にブレはない。「育成の鷹」を進化させて常勝化の下地づくりを続けていく。

今季のソフトバンクはシーズン終盤に圧倒的な強さを見せてリーグVを果たすと、巨人に4連勝で史上2度目の4年連続日本一を達成した。強さの象徴となったのが、育成出身選手の活躍だ。日本シリーズでは投手3冠の千賀、2冠の石川が1、2戦に先発して白星。さらには正捕手・甲斐、盗塁王に輝いた周東らがチームの原動力となった。三軍制となり10年目。巨大ファーム施設を造り環境面の整備も進めてきたが、マニュアルのようなものはあるのか。

三笠GM 一番はスカウトが短所には目をつぶりながら、光る長所がある選手を積極的に指名していること。2番目に育成方針として、長所を伸ばすことに注力してきた。どういうコンセプトで獲ってきた選手なのかをスカウトから現場の監督コーチ陣に共有することに始まり、その後もフロントとして育成方針について頻繁にミーティングします。マニュアルというより、選手本人とも「どんな選手になりたいか」などと面談して、現場のコーチ、フロントと意識をすり合わせていくことの繰り返しかなと思う。

資金を投下して三軍の体制を確立しているメリットも大きい。二軍制の球団の場合、育成選手は支配下の二軍選手との競争となり試合数は限られる。ただ、ソフトバンクの場合は三軍単体で、独立リーグや韓国二軍、大学社会人チームと80試合近くを組む。高校生が大学に進学した場合と比較しても実戦は多くなる。

三笠GM 試合経験を通じた育成は重視しています。アマチュアとプロの違いは、週1の休みで年間通して高いパフォーマンスを発揮すること。そのためにどういう能力が必要かを学ぶ場としても重要。年間に必要とする試合数であったり、投球回数、打席数は、チームと話してリスト化して綿密にやっています。

また、ソフトバンクの取り組みを語る上で欠かせないのがITシステムだろう。映像やトラックマンのデータは、一軍選手だけではなく育成選手までもが自らツールとして活用できる。

三笠GM もともと選手の成長や活躍をいかにサポートできるかという発想で取り組んでいます。彼らがパフォーマンスを発揮するために必要なものは何か考えてサービスを提供する。最後に選ぶか、選ばないかは選手が考えること。そこをポリシーにしています。

とはいえ、その〝サービス〟は拡大の一途をたどっている。現在、球団として本格的に着手しているのが「どうすれば速い球が投げられるか」「強いスイングができるか」などの動作解析の分野になる。今年は本家である米・ドライブラインのような解析技術を球団内に取り入れるために新たに職員を採用している。

三笠GM 動作解析はシステム化をまだしているわけではないが、逆にファームの選手を中心に取り組みを始めている。幸い工藤監督はそういうところに熱意やご理解がある。話をしながら進めていきたい分野です。ゴルフでもデシャンボー選手とかが、自分の動作解析をして、トラックマンのデータを常時測って、それに基づきトレーニングをして、とやっている。野球のみならずトップスポーツでは重要になってきているとの認識です。

孫オーナーが掲げるのは巨人V9を超えるV10。そのために歩みを止めるつもりはない。

三笠GM オーナーから言われていることとしては、いま三軍制で我々は成功しているが(すべてで八軍制となる)MLBに匹敵するようなファーム組織は持っていない。育成部門のさらなる発展も検討課題の大きな一つです。加えて選手の獲得のマーケットも世界に向けて視野を広げてやっていかないといけない。

最終目標となるのがスローガンの「目指せ世界一」だ。ソフトバンク球団が本気で目指している「夢」については次のように語った。

三笠GM 世界一になりたい。それが夢です。世界一決定戦の道筋を検討していくのも課題です。4年連続で日本一になった結果、MLBの1シーズンの優勝球団とやったらどのくらいのレベルだろうという記事を書いてくれた人がいた。我々としては日本一を続けることの理由の一つなので、そういった記事が出てきたというのはうれしかった。自分たちが「世界一になりたい」と思っても、リーグやファンあっての球団。皆さんから「挑戦したっていいじゃないか」「面白そうじゃないか」と言ってもらわないと何もならないですから。

まだまだ通過点である常勝軍団の取り組み。来季もパのライバル球団との戦い、そして日本シリーズを制してV5を果たす。

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