高知のご当地パン「羊羹ぱん」のほほえましい誕生由来とは?【実食ルポ】

11月下旬、東京・池袋の東武百貨店で開催された「パン祭り」。そこには全国のご当地パンが集合していましたが、その中で冷蔵コーナーにあった高知県・菱田ベーカリーの「羊羹ぱん」。北海道や静岡にも羊羹ぱんはありますが、誕生の由来がほほえましく、お取り寄せもできる高知の「羊羹ぱん」を紹介します。

創業以来地域を支える「菱田ベーカリー」

高知県宿毛市に昭和26年創業の「菱田ベーカリー」。「地域を背景にした昭和なパンづくり」をコンセプトに、なつかしい商品をあたらしく創り上げている地域密着型のパン屋さんです。

現在の社長が、食糧難の戦時中に、米ではなく配給で比較的安定して手に入る小麦をもとに創業。当時は、パンミキサーなどもなく木箱の中でひとつずつ成型し、煉瓦と土で作ったようなパン釜で焼いていたそうです。昭和30年代には自転車の荷台に乗せて販売し、昭和40年代にはいち早く機械化して学校給食や喫茶店やスーパーでも販売を始めました。この頃に誕生したのが宿毛名物「羊羹ぱん」です。

誕生由来にも注目!高知の「羊羹ぱん」

宿毛市を中心に高知県南西部と愛媛県南部で愛されている「羊羹ぱん」(216円・税込)。

手のひらサイズで馴染みのある楕円形。パンをコーティングしている羊羹は薄くなめらかで美しい・・・。

淡い焼き色の丸いパンの中には、北海道産とカナダ産の小豆を自家配合したこしあんが入っています。餡が多めと思いきや、舌触りもよく、甘さ控えめであっさりしています!

冷蔵販売でしたが、パン生地はしっとりして、こしあんの味わいの良さをお邪魔せず、ついつい食べ進んでしまうほど、全体が優しい作りになっていました。

昔、砂糖は九州で献上品として扱われていましたが、もともと船での交流もあった高知県宿毛市では、和菓子などの甘党文化が根付いたという歴史があります。菱田ベーカリーは和菓子製造もしていて、余った羊羹をパンにつけて販売したのをきっかけに誕生し、地域の田植え仕事のおやつに食べられていたそうです。

しかし、パン袋に裏には“昔、パン職人さんが焼きすぎて表面が焦げたパンをごまかすために茶色の羊羹を塗って販売したのが始まり”という、実にほほえましい誕生秘話も書かれていました。まさに失敗は成功のもと!コーティングの羊羹も焦げをごまかしたのかと想像すると、愛しさも倍増します。

カラフル羊羹ぱんはお取り寄せも!

定番のプレーンをいただきましたが、宇治抹茶・栗・紫芋・柚子ピール入り柚子餡・つぶあんとホイップ・高知県黒潮町の天日塩の塩麹入り、と種類豊富でネット販売もされています。

今後は、「記憶に残る味をとどけたい」をミッションに、関東のスーパーや駅ナカ催事など出店も増やし、高知県ならではのオリジナルパンのマーケットを開拓していくとのこと。

今回の「パン祭り」でも冷蔵庫の底が見えるほど完売目前で、昭和の味わいが令和の現代でも変わらず愛され続けていることを実感!ほっこり誕生秘話とともに、地域独特の文化が生んだ懐かしい味わいの羊羹ぱんを、おやつにしてみてはいかがでしょう。

菱田ベーカリー

住所:高知県宿毛市和田340−1

電話:0880−62−0278

HP:https://hishidapan.co.jp/

オンラインショップ:https://hishidapan.co.jp/ec/html/

[all photos by kurisencho]

© 株式会社オンエア