コロナ第3波 感染者ゼロ 長崎の離島 水際防止に懸命 体調不良で来島自粛要請も

帰省客らを乗せ、厳原港に入港してくるフェリー=対馬市厳原町

 長崎県内でも新型コロナウイルス第3波の感染者が増加しているが、離島の五島、上五島、壱岐、対馬の4医療圏では9月に新上五島町で感染が確認されて以降、ゼロが続いている。しかし、ひとたび感染が広がれば本土に比べ医療資源が乏しいため、医療体制が一気に逼迫(ひっぱく)する可能性もある。年末年始の帰省シーズンを迎え、一部の離島では体調不良の場合は来島自粛を求めるなど、水際防止に懸命に取り組んでいる。

 「当町は高齢者が多く、医療体制に限りがある。引き続き、外出時のマスクの着用や三密の回避、手洗い、手指消毒等の感染防止対策を講じてほしい」
 今月23日、五島列島北端の離島、北松小値賀町のホームページに西村久之町長のメッセージが掲載された。町長は帰省者らにも発熱や体調不良がある場合は来島を控えるよう要請。成人式も延期し、来島者がウイルスを持ち込むリスクの低減に努める。
 五島市富江町の特別養護老人ホーム「只狩荘」も26日から面会を全面禁止にした。山田峰雄施設長は「職員にもできるだけ島外に出ないようお願いしている。職員の家族が帰省する場合は、市の補助事業を活用して職員がPCR検査を受ける」と言う。
 離島が水際防止に敏感なのは医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さが背景にある。例えば小値賀町は診療所が1カ所あるだけで、感染者が出た場合は船で町外の医療機関に搬送する。しかし同町を含む上五島医療圏のコロナ病床は最大で17床しかなく、県内八つの医療圏でも最少。加えて離島は本土に比べ高齢化率が高く、特に小値賀町は町民2300人の約半数が65歳以上の高齢者。高齢者は重症化のリスクが高く、そうなれば海上自衛隊のヘリや海上保安庁の船で本土の医療機関に搬送される。
 これまでに県内の離島で確認された感染者20人のうち壱岐、五島、対馬の3人が重症化の恐れがあるとして本土に運ばれた。だが現在は本土で感染者が拡大しており、医療体制は厳しさを増している。離島の県病院を運営する県病院企業団の米倉正大企業長は「搬送体制は再確認しているが、本土の重症者用病床が逼迫すると、離島の感染者を受け入れてもらえるか心配だ」と話す。
 27日、対馬の厳原港では高速船を降りた帰省客が家族の出迎えを受ける姿が見られた。福岡市内の大学に通う男子学生(19)は「福岡でも感染者が増えているが気を付けて生活をしてきたので、帰省を決めた。実家には80代の祖父母がいるので手洗いやマスク着用を徹底したい」と話した。

 


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