ストイックなキング・カズゆえに見せた新型コロナへの〝厳重警戒〟

新型コロナの予防を怠らないカズ

【取材のウラ側 現場ノート】13年ぶりにJ1昇格を果たした横浜FCの〝キング・カズ〟こと元日本代表FW三浦知良(53)の2020年シーズンは4試合出場で無得点だった。

2月の「キックオフカンファレンス」に登場した際、開幕戦で激突するJ1神戸の元スペイン代表アンドレス・イニエスタ(36)と握手を交わし「思いきり楽しんでやれたらいい。そのなかで勝利をつかめるように全力を尽くしたい」などのコメントを聞いて以降、直接取材する機会はなかったが、ベテランFWにとって新型コロナウイルスは他のチームメート以上に深刻だったようだ。

カズとV川崎(現東京V)時代のチームメートで、現在も親交がある元日本代表FW武田修宏氏(53)は春ごろに「カズさんはコロナをかなり意識にしているって。感染したらヤバいので(対策を)徹底しているみたいだ」と話していたように、新型コロナウイルスの影響で2月末にリーグが中断して以降、かなりナーバスになっていたという。

カズといえば、ストイックに自らの肉体を追い込みながら日々の生活も徹底管理。そうした日ごろの努力で53歳となった今でも現役選手としてピッチを走り回っているわけだが、コロナに感染してしまった場合、症状がなかったとしても、最短で2週間の隔離となる。となれば、練習もできなくなり、プロとして試合に臨むコンディションを維持できなくなる。

サッカー界では一般的に、トレーニングを2週間休めば、体調を取り戻すのに2週間かかるとされるため、完全復帰までは約1か月。53歳のカズにとっては大きな痛手だ。日々、筋力や体力などプロしてのコンディションを維持するだけでも大変な作業で年間の完全オフ日は1週間に満たないという。それだけの苦労している中で感染したとなれば、試合に出られる状態に戻すの決して簡単なことではない。

全盛期だった1990年代から「自分が出ない試合で代わりに出た選手が大活躍したらポジションがなくなる。だから休みたくない」と主張していたように、チーム内の競争で後れをとれば、試合に出るチャンスが減ることになる。特にJ1へ復帰した晴れのシーズン。カズにとっては存在をアピールする絶好の舞台だっただけに〝外敵〟に対し、過敏になったのも当然と言えるだろう。

来シーズンはJ1残留をかけた戦いになる。カズの出番が減ることも予想される中、コロナに最大限の注意を払いながら、今季は実現できなかったジーコが持つJ1最年長ゴール記録(41歳3か月12日)の更新とゴールパフォーマンスのカズダンスをぜひとも見せてほしいものだ。

(サッカー担当・三浦憲太郎)

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