眠れない憲法と眠れる主権者…戦後今なお続く“ハリボテ立憲民主主義”

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。12月10日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の倉持麟太郎さんが“眠れない憲法”について述べました。

◆憲法は自動運転装置?

憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案について、自民・立憲民主の両幹事長が会談し、今国会で採決を見送る代わりに来年の通常国会で何らかの結論を得ることで合意。2018年6月に与党などが提出した改正案は来年にも採決される可能性が出てきました。

憲法改正が強行されると怖れる人がいますが、そもそも発議に必要な改憲勢力は数が足りていないのが現状。さらには2017年の衆議院選挙の当選者のうち、何らかの改正を支持している人は82%いるものの、個別の争点となると過半数すら届かず、「そんなに怯えなくても今すぐ改憲の発議がされ、過半数をとることはない」と倉持さん。

そんな前段に続き、この日の論点でもある、憲法学者リチャード・タックが唱える「憲法は自動運転装置」という話について言及。これはどういうことかというと、「飛行機は飛んだ後に自動運転をするが、それと一緒で国家運営や人権の指針など全て憲法を作ってプログラミングする」と倉持さんは解説。さらには「我々は日常が忙しく、プログラミング後、主権者は寝ている。でも、バグなどがあったときに起きるのが、憲法改正」と補足します。

◆「眠れない憲法」なのに「眠れる主権者」

世界の民主主義国家の憲法の平均文字数が2万4,430語に対し、日本国憲法は4,998語。つまり「憲法が本来カバーしないといけない領域が小さい、そうなると行間や余白が多くなる」と言います。

これにMCの堀潤は、「解釈がどうにでもなってしまう憲法はいかがなものかという反面、運用の幅が広いということでもある」とその長短を指摘。すると倉持さんは、「ただし、余白が多いと政治家や裁判官、官僚などに解釈や運用が任せがちになってしまう。本来であれば、余白を埋めている彼らの動きを我々は眠らずに監視しなくてはいけない」と主張します。

なお、国連の自由権規約委員会は日本国憲法の「公共の福祉」という概念に対し、曖昧で制限がないと懸念しているそうで、「つまり漠然としていて不完全」と倉持さん。そのため、よりしっかりと憲法の運用を監視しないといけないにも関わらず、「憲法が完璧とされ、変えないほうがいいという教育をされてきた」と危機感を募らせます。

以上のように、日本が"眠れない憲法・眠れる主権者”であることは、権力者もよく知るところで、かつて時の首相が揶揄したり、憲法の専門家も「エリートが考えていればいい」というようなことを言っていたとか。直近の憲法審査会でも辻元清美議員が「国論を二分するような問題は国民投票になじまないのではないか。議会のコンセンサスが取れなかったから国民に決着させようというのは、国民を戦わせることになり、社会の分断を招く」と発言しましたが、倉持さんは「先の米大統領選でも分断を招くのは国民投票や選挙でなく議論がなかったから」と異を唱え、「それを国民のせいにし、国民は眠っているべきとする。戦後、日本国憲法のなかで我々はそういう世界を生きてきた」と示唆。

そして最後に50年前、三島由紀夫さんが市ヶ谷駐屯地で話した言葉を示し、「我々はこの檄を、非常に保守主義的な作家の妄言として捉えるべきではない」と主張。彼が唱えた問題は今なお変わらず、「(今の日本も)国家百年の大計はアメリカに委ねている、何も変わっていない。これにもう一度向き合うべき」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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