コロナで不安な子どもたちへ 『おうちの中に楽しみ見つけよう』 こわければ親、先生に相談して

 

 長崎県内にも新型コロナウイルスの「第3波」がおしよせる中、冬休みが始まり、不安やイライラをかかえている子どもたちがいるかもしれません。心の持ちようやおすすめのすごし方について、子どもの心理にくわしい長崎大教育学部教授の吉田ゆり副学長(臨床心理士)に聞きました。

 冬休みがやってきましたね。でも今年は、新型コロナウイルスが流行しているせいで、旅行が中止になったり、おじいちゃんやおばあちゃんに会いに行けなかったりと、今までとはちがう冬休みです。悲しくなる人もいるかもしれません。予想していないことが起きたのだから当然のことです。

◆ルールの変更を
 では、こう考えてみてはどうでしょう。昨年までの冬休みにできなかったことを見つけて、楽しんでみるのです。例えば、おうちですごす時間が退屈だと思う人もいるでしょう。そんな時は、お父さんやお母さんと話し合い、ゲームをしたりテレビを見たりしてもいい時間を少し長くしてもらうのはどうですか。おうち時間を楽しくするための「ルール変更」です。その代わり、決めたルールはしっかり守りましょう。
 人生ゲームなどのボードゲームやトランプカードなどが家にあれば、お父さんやお母さん、きょうだいと一緒にやってみるのもいいですね。

◆お手伝いに挑戦
 男の子も女の子も料理や掃除のお手伝いをしてみてください。洗面所を1人で掃除してみたり、料理をするお父さんやお母さんのために調味料のふたを開けてあげたり。「面倒だな」と思うかもしれませんが、「いくつできるかな」「お母さんよりも早くできるかな」と目標を決めてやってみると、意外と楽しいですよ。何だかゲームみたい。家族の役にも立つし、きっとほめてもらえますよ。失敗しても気にすることはありません。

 

◆気持ち伝えよう
 毎日のように、新型コロナのニュースをテレビなどで聞いて不安に思っている人もいるでしょう。自分や家族、友だちがコロナにかかったらどうしよう、と心配する人もいるはずです。たしかに大変な病気ですが、もしかかっても、しっかり病院で治療すれば家に帰ってこられます。インフルエンザにかかった時にも何日か家で寝ていますよね。
 「でもやっぱりこわい」と思う人は、お父さん、お母さんに気持ちを伝えてみてください。仕事でいそがしそうだから話す時間がないという人は、学童や塾、習い事の先生に相談してみてくださいね。

◎「感度高めて子を見守って」 保護者、周囲の大人の方へ 吉田ゆり長崎大副学長
 子どもは想像力が発達の過程にあり、推論や因果関係の理解の仕方が大人とは違います。ニュースの中の「新型コロナ」が突然、自分の生活に影響を及ぼし、楽しみにしていた冬休みが思った通りにならないことに混乱する子もいます。一時的に感情を爆発させるかもしれませんが、徐々に納得しますし、この機会は子ども自身が社会とつながっていることを学ぶチャンスにもなります。

オンライン取材に応じる吉田副学長

 生活の変化を、いつもと違う楽しみがある「イベント」にする工夫が必要です。家でのゲーム漬けが心配かもしれませんが、例えばゲーム時間を1時間増やすなど、子どもと話し合って少し「ゆるい」ルールを新たに作り直すのも一つの学びになります。お勧めはボードゲームやカードゲーム。相手の手の内を推測することで先を読む力や想像力を高めます。普段は見ない子どもの姿に気付くかもしれません。
 家事については、料理や掃除などの「ゲーム性」を高めることが大切。「どれだけ数ができるか」「早くできるか」など目標値を設定して、できたら褒めてください。子どもは役に立つことが好きですし、家事は体を使うのでストレスのコントロールにもなります。
 緊急事態宣言中や夏のコロナ流行期に、親が子を怒ってばかりで虐待に近くなったケースも聞きます。家庭内にいることが増え、はけ口がない状況ですが、子どもを怒るばかりだと親も鬱々(うつうつ)としてくるので、考え方を変えないと乗り切れないと思います。
 子どもにとって漠然とした不安やあいまいさが一番の敵。コロナを怖がっている子には、感染しても入院したり治療を受けたりして治ったら家に帰ってこられるよ、と「見通し」を伝えてください。また子どもは親の意見に左右されるので大人がうわさ話をしないことが大事です。
 深く悩んでいる子どもほど人に相談できないので、周りの大人が感度を高めることが重要。親に言えなくても学童施設や塾、習い事の先生には話すこともあるので、いつもと様子が違う場合は声を掛けたり見守ってあげたりしてください。

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