競泳日本選手権を成功に導いた日本水連の「コロナ対策」

12月に行われた競泳の日本選手権(東京アクアティクスセンター)

【取材のウラ側 現場ノート】試行錯誤の1年だった。日常生活を一変させた新型コロナウイルス禍はスポーツ界も直撃し、各競技の大会が中止や延期に追い込まれた。来夏の東京五輪に向けて国内大会は再開したが、観客の有無など開催方法で手探り状態が続いている。

大きく変わったといえば、報道陣の取材活動もそうだ。ある競技会では代表して数社が会場に入りするも、ほとんどは〝リモートワーク〟。試合はライブ映像を視聴し、選手の声はオンラインツールで聞いた。陸上のセイコーゴールデングランプリ(8月、国立競技場)や日本選手権(10月、新潟)はメディアの入場が許可されたものの取材はオンライン。画面に映る選手との距離感は否めなかった。

そんな〝新しい様式〟に慣れてきたころ、12月に行われた競泳の日本選手権(東京アクアティクスセンター)の運営には驚いた。レース後の取材は報道陣が飛び込み用プール付近の多目的室で待機し、選手は息を整えながらプールサイドを歩いて多目的室の前に立つ。大きな窓が互いの空間を仕切って実現した「新ミックスゾーン」にコロナ禍以前の取材風景を思い出した。

日本水連の感染対策も印象的だった。水連関係者によると、場内に8か所、計11台設置した空気清浄機は風力が一般製品の4倍で、食品会社の工場が使うようなマシンを導入したという。また、空気の粒子を感知する探知機で10分ごとのデータを採取。ウイルスレベルの空気が出ていないかを繰り返してチェックし、大会成功を後押しした。

コロナ対策に100%はなく、この先〝第4波〟が訪れるのか終息に向かうのかも不透明。それでもロンドン五輪メダリストの入江陵介(30=イトマン東進)が「一つひとつの競技会の成功例を持っていって、五輪をどうやっていくか。中止を目的とした議論ではなく、やるとした上での議論をどんどん進めてほしい」と話したように、今回のケースが大舞台へ貴重なサンプルとなることを信じたい。

(五輪担当・小松 勝)

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