2年連続最下位、今季のオリックスを振り返る 吉田正が首位打者も…【野手編】

オリックスシーズンレビュー2020【画像:パーソル パ・リーグTV】

大黒柱・吉田正尚が初タイトル、浪速の轟砲は3年ぶりの規定打席到達

昨季まで打線を支えたロメロが楽天に移籍し、新たにメジャーリーグからジョーンズを迎え入れた今季の野手陣。しかし、レギュラー陣の不振や故障が相次ぎ、吉田正尚外野手が中心に座りながら、得点数はリーグ最少の442に終わった。なかなか先発メンバーを固定できなかったが、若手選手が台頭するなど収穫もあった。オリックス・バファローズのシーズンレビュー後編は、打者に注目して2020年シーズンを振り返っていく。

昨季同様に期待打席到達は2人と、今季もなかなかメンバーを固定できなかったオリックス。その中で、シーズンを通して打線を支えたのは吉田正とT-岡田外野手だった。

プロ入り当初のケガに悩まされていた姿など今は昔、3年連続で全試合出場を果たして自身初の打撃タイトル首位打者を獲得した吉田正。平成生まれとしては史上初となる打率.350を記録した今季、特筆したいのは三振の少なさだ。

パ・リーグの規定打席到達者で最も少ない29個(492打席)という数字は、次点がソフトバンクの中村晃の47個(413打席)ということを踏まえるとよりそのすごさが伝わってくる。一方で、6、7月に7本塁打を記録しながら8月以降はその数がなかなか伸びず。シーズンで14本塁打に終わり、3年連続20本塁打とはならなかった。まだまだ伸びしろを残す稀代のスラッガーは、令和初の3冠王に向け止まることなく歩みを続ける。

T-岡田は3年ぶりに規定打席到達を果たした。20試合に出場して打率.120、本塁打はわずか1本に終わった昨季オフ、プエルトリコのウインターリーグに参戦して転機を求めた。今季は開幕戦に2017年以来となる1番で名を連ねると、猫の目のように変わり続けるスタメンの中でさまざまな打順を任され、最終的には1~9番すべてで先発出場するシーズンとなった。

3年ぶりの規定打席到達、2年ぶりの2桁本塁打、さらには昨季ゼロだった盗塁は5個を記録するなど、さまざまな形で復活に向けたステップを着実に踏み続けた。かつての本塁打王が新たな姿を示した今季、復活した浪速の轟砲が再びチームを上位進出へ導く。

鳴り物入りの大砲は苦戦、来日3年目の巨砲はさらなる存在感

2019年シーズン限りでロメロ、マレーロが退団したが、新たにジョーンズとロドリゲスを迎え入れて戦力を整えた。しかし、ロドリゲスは打率.218、6本塁打と振るわず、ジョーンズも開幕前の期待感とはやや外れた成績に終わった。

昨季オフ、MLB通算282本塁打の実績を掲げて入団したジョーンズは、開幕から27試合連続で4番として先発するも、打率.240、4本塁打となかなか状態が上向かず。以降も8月中旬までは4番を中心に起用されたが、シーズン後半にはその座を吉田正やモヤへ明け渡すこととなった。

シーズンを通しての成績は打率.258、12本塁打43打点。途中に腰痛での登録抹消を挟み、10月半ばには下半身のコンディション不良で帰国したことを踏まえても物足りない数字となった。来季は2年契約の最終年。軽いスイングで本拠地・京セラドームの5階席に運んだ3号弾など、随所に桁違いのパワーを見せつけただけに、さらなる活躍に期待したいところだ。

ジョーンズ、そしてロドリゲスと新加入組が振るわない中、入れ替わるように出場機会を増やしたのがモヤだった。昨季途中に中日から加入、自己最多の10本塁打を記録した長距離砲だったが、今季は開幕から外国人枠の関係で出場機会が限られ、1軍初出場は7月31日となった。

その後も8月10日に1軍登録を抹消されてひと月をファームで過ごした。しかし、9月半ばに1軍復帰すると、2戦目の西武戦で今季初本塁打を記録し、以降は再びスタメンの地位を勝ち取る。昨季よりも出場機会が限られた中で、キャリアハイとなる12本塁打、チーム4位の38打点と打線の中心で躍動した。2メートルを超える長身に加え、今季は帽子からはみ出るほどのアフロヘアでも存在感を示した。シーズンを通しての活躍が見られれば、大きな戦力となることは間違いない。

今季は2人の新外国人選手が加わったオリックス打線だったが、シーズン終盤はやはり日本球界での経験が豊富なモヤの活躍が目立った。来季、2年目を迎えるジョーンズがどのような打撃を見せてくれるか。そして、フル出場したモヤがどのような成績を残すのか。まだまだ伸びしろのありそうな2人の活躍が、チーム浮沈のカギを握りそうだ。

レギュラー争い途上の内野陣、抜け出すのは誰か

今季は吉田正やT-岡田、そしてジョーンズやモヤといった長距離砲が打線の中核に座った一方で、その他のポジションでは内外野とも確たるレギュラー選手が現れないままシーズンを終えた。

昨季主将を務めた福田周平内野手の故障や、大城滉二内野手の打撃不振によりなかなかメンバーが定まらなかった内野陣。最多出場は94試合の大城だったが、打率が昨季の.262から.207へと落ち込み、シーズン終盤には若手選手に出場機会を譲ることも多くなった。昨季と同数の11犠打、そしてやや数字を落としたものの7盗塁を記録し、打線の潤滑油としての役目はしっかりと果たしただけに、来季は再び打撃から存在感を示していきたいところだ。

福田は自身初の規定打席到達を果たした昨季から一転、開幕直前の故障で今季初出場が7月31日となった。復帰後はコンスタントに安打を重ねて健在ぶりを示すと、9月4日には自身初となる5番、さらに17日には3番と、クリーンアップの一角としての出場も経験した。打率.258、出塁率.366といずれも昨季から数字を向上させた。自己最少の出場試合数に終わった今季を糧に、1年を通した活躍が期待される。

安達了一内野手は、故障や体調不良が重なってレギュラー定着以降最少の56試合出場に終わった昨季から一転、1年を通して1軍に帯同し続けるシーズンとなった。国指定の難病・潰瘍性大腸炎との折り合いをつけながら出場こそ78試合にとどまったが、開幕から安定感のある打撃を披露して打率.289、15盗塁を記録。シーズン終盤にはクリーンアップの一角として起用される機会も増え、攻守にチームをけん引した。出場機会が限られる中でも、その背中が示す存在感は大きい。

ここ数年で内野手争いを繰り広げてきた3選手に加え、若い選手が続々と名乗りを挙げてきたのは明るい材料だ。昨季のドラフト1位・太田椋内野手は、プロ初本塁打を含む3本塁打を放って打率.259を記録。ケガに苦しみ出場こそ20試合にとどまったが、持ち前の打撃センスでレギュラー争いに加わった。同じく高卒2年目の宜保翔内野手、そしてシーズン最後の5戦で先発出場したドラフト2位ルーキー・紅林弘太郎内野手も参戦し、来季の二遊間のポジション争いはし烈を極めそうだ。若手、ベテランと入り乱れたレギュラー争いから抜け出すのはどの選手になるか。

外野陣からは苦節を経た韋駄天が台頭、捕手再転向の大砲が終盤に存在感示す

吉田正という大黒柱の立つ外野陣も、もう2つのポジションをなかなか固定できないシーズンとなった。出場機会を増やしたのは佐野皓大外野手。昨季は代走での起用が中心だったが、今季はシーズン終盤に「1番・中堅」として定着。盗塁数も昨季の12から20に増やし、レギュラーとしての出場が続いた11月は打撃面でも打率.261と成長を見せた。投手としての入団から3年目での野手転向、そして今季は右打ち専念から両打ちへの再転向と、プロ入りから6年間の紆余曲折を経てレギュラー獲得が手に届くところまで見えてきた。球界屈指の韋駄天のサクセスストーリーは、来季どのような姿を描くか。

吉田正、佐野に続く1枠の争いでは、内外野を兼ねるユーティリティ選手がポジション争いに名乗りを挙げた。宗佑磨内野手は故障で開幕1軍入りを逃すと、その後昇格も打撃が振るわずに9月15日に1軍登録を抹消されてしまう。しかし、再び1軍の出場機会をつかむと、10月は打率.233、11月は打率.333と徐々に結果を残し、外野、そして三塁をこなしながらスタメン出場の機会を増やしていった。今季の宗といえば、やはり7月25日の楽天戦で記録したランニングホームランが印象深い。加えて同日にホームスチールを決め、佐野にも劣らぬ快足ぶりを披露した。来季は内外野を問わないユーティリティさを武器に、今一度レギュラーポジションを狙う。

昨季、若月健矢捕手が138試合に出場してその地位を確立したかに見えた正捕手のポジションであったが、今季は再び激しい争いが繰り広げられた。

開幕マスクを被った若月は、新たな打撃フォームを取り入れて打撃成績が向上。昨季の打率.178、1本塁打から、7月終了時点で打率.273、自己最多となる3本塁打を記録して扇の要の地位をいよいよ不動のものとしたかに思われた。しかし、8月に入ると打率.103と大きく調子を落とし、スタメンマスクを被る機会も減少。中嶋聡監督代行が就任した8月21日以降は先発出場が17試合にとどまり、出場試合数は4年ぶりに100試合を下回る78試合に終わった。8月に苦しんだ打撃は9月に入り打率.286と持ち直し、改めて打撃改造の成果を示した。再びの正捕手奪取へ、シーズンを通した活躍に期待したいところだ。

その若月に代わって、シーズン中盤から出場機会を増やしたのが伏見寅威捕手だ。7月9日の初先発から早速1号本塁打を放ってアピールに成功すると、8月上旬までは3番、あるいは5番といった打順もこなして指名打者としての出場が続いた。そして8月21日、中嶋監督代行の就任初日から先発マスクを被ると、以降は捕手としての出場が大きく増加。シーズン序盤は山崎福の先発時に限っての出場が続いたが、8月23日のアルバースを皮切りに、山本、山岡、田嶋といったローテーション投手ともバッテリーを組んだ伏見。10月30日には山岡を1年ぶりの完投に導くなど、投手陣をけん引する活躍が続いた。

得点力不足解消へ、スタメン定着を果たすのは

来季もこの2人を中心に激しいポジション争いが繰り広げられそうだが、シーズン終盤、ここに新たな名前が加わった。2年目を迎えた頓宮裕真捕手だ。亜細亜大学時代は捕手として名を馳せていたが、プロ入り後は三塁手に転向していた頓宮。しかし、昨季中盤に捕手への再転向を果たすと、今季はケガによる離脱を経ながら10月にはファームで打率.296、2本塁打を記録し、10月23日に満を持して1軍昇格を果たした。初先発となった翌日のロッテ戦でアルバースを6回2/3、無失点の投球で白星に導くと、以降は7試合で先発マスクを経験。打撃面でも打率.313、2本塁打と光るものを見せ、正捕手争いの急先鋒として存在感を示した。

序盤、中盤、終盤とそれぞれ起用されてきた3選手が来季はどのような活躍を見せるか。そして、この中から正捕手として抜け出す選手が現れるのか。来季の巻き返しにむけて、投手陣を引っ張る扇の要を巡る争いにも注目していきたい。

吉田正が首位打者のタイトルを手にする充実の1年を送った一方、シーズンを通して攻撃力不足に悩まされた2020年のオリックス。各ポジションともに多くの選手が起用され、台頭してきたが、頭1つ抜ける存在が現れないシーズンであったとも言えそうだ。

若月を筆頭に3選手が名を連ねる捕手、太田を筆頭に高卒2年目以内の選手たちが素質の片りんを見せた二遊間、そして苦節を経て活躍の兆しをつかんだ佐野が引っ張る外野手と、多くのポジションに有望な選手がそろうだけに、伸びしろは十分にある。ジョーンズ、モヤの両外国人選手、さらには杉本や中川圭、育成から1軍定着を果たした大下らレギュラー候補とともに、来季は「点を取れる」打線を形作ることが目標となる。(「パ・リーグ インサイト」成田康史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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