全日本ロード:野左根航汰、2021年はJSB1000王者としてSBKにフル参戦/チャンピオン特集

 2020年に全日本ロードレース選手権のJSB1000クラスに参戦した野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)はヤマハYZF-R1を駆り最高峰で初のチャンピオンに輝いた。

 野左根は2013年にJ-GP2クラスでチャンピオンを獲得し、2014年からJSB1000にステップアップ。2015年からヤマハの若手育成を担うユースチームに加入し、2017年にはファクトリーライダーとして参戦を開始させた。YAMAHA FACTORY RACING TEAMに加入後はランキング5位、4位、3位と成績を上げて2020年も同チームで戦った。

2020年全日本ロード第1戦SUGOレース1:中須賀克行の転倒シーン

 今季は新型コロナウイルスの影響を受け、4月の開幕戦が延期となり8月にスポーツランドSUGOで開幕した。ウエットレースとなった第1戦SUGOのレース1では、チームメイトの中須賀克行が転倒リタイアしたが、野左根は独走で優勝。レース2でも優勝して開幕2連勝を飾った。

2020年全日本ロード第4戦もてぎ JSB1000 レース2:トップを走る野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 続く第2戦岡山は台風により中止となる。そして第3戦オートポリスでも両レースを制して4連勝。第4戦もてぎでも連勝を重ねて、6戦連続ポールポジションと開幕6連勝を達成した。

 最終戦鈴鹿では、中須賀にポールポジションを奪われるも、決勝レースでは野左根がすぐにトップに浮上。しかし中須賀に逆転を許し2位でフィニッシュした。このレースで野左根は、参戦7年目のJSB1000クラスで自身初となるチャンピオンを決めた。また、レース2では今季7勝目を獲得してシーズンを締めくくった。

 YAMAHA FACTORY RACING TEAMにとっては、野左根と中須賀の活躍により、4大会8レースすべてのポールポジションと優勝を獲得する圧倒的な強さを見せた。

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 JSB1000:野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 野左根は最終戦鈴鹿のレース1ではプレッシャーを感じたというが、「チャンピオンが獲れてホッとしています。レース終了直後はいろいろな感情がありうれしい気持ちが飛んでしまいました。ただ、中須賀選手がすごく喜んでくれ、吉川監督、スタッフが喜んでいる顔が目に入り、少しずつ嬉しさがこみ上げてきました」と語った。

 2020年シーズンにおいては「新型コロナウイルスのためにレース開催が延期になり8月の開幕となりましたが、こんなに待ち遠しい開幕戦は今までに経験がありません。その開幕戦では連勝したものの、レース1で中須賀選手が転倒と欠場で、中須賀選手に勝つという目標は達成できませんでした。第2戦は台風で中止。第3戦は赤旗中断での勝利と、中須賀選手に接触しての優勝で、内容はスッキリしないものでした」と振り返った。

「そして第4戦もてぎ、ドライでのレース2で中須賀選手を引き離し、ようやくひとつの目標をクリアできました。中須賀選手という素晴らしいライダーが身近にいて目標とすることで、成長できたと思っています。そしてチャンピオンを獲れたのは、その中須賀選手や吉川監督、チームスタッフ、レース活動を支えてくださっているスポンサーの皆様、ファンの皆様、そしてチャンスをくれたヤマハのおかけです。本当に感謝しています」

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 JSB1000:野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 また、吉川和多留監督は「今年の野左根選手は、ライダーとして自分が一番になるんだという気持ちが明らかに高まってきてきました。中須賀選手についていくだけでなく、勝つためのマシンを作り、自分で物事を考え、勝負を挑む姿勢も見えてきました」と述べた。

「さらに、中須賀選手から吸収するだけでなく、自分の良いところを伸ばす努力してきたことが強さとなり、チャンピオンへ結び付ついていったのです。このチームはダブルエースの体制ですが、中須賀選手も先輩として野左根選手の成長を支えてきました。悔しさもあると思いますが、ともに喜べる関係であり、監督としても常にふたりが素晴らしいレースをしての結果なので、心から嬉しく思います」

「野左根選手はこの後、スーパーバイク世界選手権(SBK)に主戦場を移しますが、この勢いのまま全日本チャンピオンとして思いっきりチャレンジし、さらに強いライダーになってくれることを期待します。最後に、我々の活動をサポートしてくだされるスポンサーの皆様、ファンの皆様には心から感謝いたします。ありがとうございました」

 2021年に野左根は、全日本ロード王者としてGRTヤマハ・ワールドSBKジュニアチームからSBKにフル参戦する。

「ヤマハと来季の話し合いをした時にSBKを希望しましたが、難しいと思っていました。タイミングが合って、承諾を得てもらって9月上旬に吉川監督から知らされて、聞いたときはびっくりしたし、まさか実現するとは思いませんでした」とSBKに参戦することになった経緯を話した。

2020年全日本ロード第3戦オートポリス:野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

「希望したことだったので率直に嬉しかったですが、全日本ロードのレースで結果を残さないといけないなと改めて思いました。第3戦オートポリスでは中須賀選手と接触してしまいました。明らかに自分の力不足だったけど、勝負できる回数が少ないとわかっていたのでどうしても勝負したかった思いがありました。あの時は申し訳なかったですがいろいろな思いがありました。中須賀選手にも感謝しています」

「大好きなチームなので離れたくない気持ちもあります。結果も残せてきたので、やり残してきたことはないわけではないので、まだまだ国内でできることもありますが、SBKに行く時期は好きに選べると思っていません。チャンスは今しかないと思いますし、これを逃したら一生行けないとわかっていたので、まずはSBKに挑戦して修行します」

「中須賀選手とはまったく走らなくなるわけではなくて、MotoGPのテストは一緒にするので、刺激を貰いながら負けないように頑張りたいと思います。SBKでチャンピオンを獲ることが目標ですが、来年簡単に獲れるとは思っていません。タイヤが違い、コースも初めてです。でも2020年に(チームメイトの)ギャレット・ガーロフ選手は表彰台に上っているので、その活躍に負けないことが目標です。日本のファンにも応援してもらえるような元気の良い日本人ライダーになりたいと思っています」

2020年全日本ロードチャンピオンの4人

 中須賀は野左根について「レースに対する取り組み方や顔つきが昨年までとまったく違った状態でやる気に満ちあふれていて、意識を持って準備して入ってきていました。普段過ごしていても考えれるようになったし、コメントも出るようになったし、ライダーとしてレベルアップしています。走りについてもバイクを理解していて、どうすれば速く走れるのかということができてきたのが強さに繋がっていると思います」と評価した。

2020年全日本ロード JSB1000:チャンピオンを獲得した野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
2020年全日本ロード JSB1000:チャンピオンを獲得した野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)のヤマハYZF-R1

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