長崎県内政局 衆院選

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 今年は10月21日に衆院議員の任期満了を迎える。県内では今のところ現職6人、新人4人の計10人が次期衆院選へ立候補を予定。菅義偉首相が早期の衆院解散に慎重な姿勢を示し、解散のタイミングが絞られてくる中、立候補予定者らの前哨戦が活発化している。

◎1区 国民「比例復活ない覚悟」

 国民民主現職の西岡秀子氏(56)=1期目=、自民現職の冨岡勉氏(72)=4期目、比例九州=、共産新人の安江綾子氏(44)の3人が出馬する見通し。
 「(野党が)県内で唯一いただいた議席を2期目につなげるのが私の大きな責任。どんなに厳しくても小選挙区で勝ち上がる」。昨年12月6日、長崎市で開かれた国民民主県連結成大会で西岡氏は力強く訴えた。
 この3カ月前、旧立憲民主、旧国民などの合流新党「新立憲民主」に参加せず、「いばらの道」も覚悟した西岡氏。旧国民の一部議員が結成した新国民に加わったが、新立民を支援する連合が新国民の小選挙区候補も「支援」と方針を修正したことで懸念は一定解消された。
 新立民県連も1区には候補を立てず西岡氏への「全力支援」(山田朋子代表)を約束するが、新国民の国会議員は16人と小規模で比例票獲得は厳しい。党関係者は「比例復活はない覚悟。自民も背水の陣で来るはず。それ以上の危機感で取り組む」と表情を引き締める。
 11月21日に長崎市内であった冨岡氏の拡大選対会議。後援会関係者ら約130人を前に、冨岡氏は国の新型コロナウイルス感染症対策への貢献などを強調し、「5期目を目指す戦いが1年以内に始まる。最後の戦いになるかもしれない」と決意を語った。
 後援会幹部は「冨岡のやってきたことを有権者に伝え、票につなげたい」と意気込む。前回は西岡氏に約1万票差をつけられ比例復活を果たしたが、ある県議は「(長崎市の)市議、県議の数の多さを考えると負けるのは恥だ」と危機感をあらわにする。
 だが別の県議は「目に見えた地元への貢献が足りない。議員団との連携も不足し温度差がある」と冷ややか。実際、冨岡氏の街頭活動に参加する議員としない議員がおり、まずは挙党態勢の構築が課題。政権与党の公明との連携も鍵を握っている。
 安江氏は精力的に街頭活動を続ける。党県委員会の山下満昭委員長は「いつ選挙があってもいいように準備だけはしている」と話す。

◎2区 自民、立民 現職激突

 自民現職、加藤寛治氏(74)=3期目=と、比例北陸信越ブロックからくら替えする立憲民主現職の松平浩一氏(46)=1期目=の現職2人が立候補を予定している。強固な保守地盤を背景に組織固めを進める加藤氏に対し、松平氏はクリーンな政治を訴え、知名度アップを目指している。
 昨年9月まで約1年間、農水副大臣を務めた加藤氏。島原半島や諫早市などで土地改良事業による農業環境の向上、雲仙・普賢岳噴火後の復興事業の継続など、地元と連携して着実に成果を上げてきた。
 諫早市と南島原市深江町を結ぶ地域高規格道路「島原道路」の有明-瑞穂間(約10キロ)の新規事業化が本年度決まり、地元県議の一人は「多くを語らないが、地元のためにぶれない」と語る。後援会や農林水産などの業界団体の支援を受け、臨戦態勢を続けている。
 江戸時代、島原藩を治めた深溝(ふこうず)松平家の遠縁に当たる松平氏。弁護士時代、民間企業での勤務や国際的活動も豊富だ。2018年11月の立候補表明後、小まめに選挙区内を回り、支持拡大に努めてきた。
 国会では、破産情報のオンライン公開対策などに尽力。若い世代が安心して家庭を築き、子どもを産み育てられる社会に向けて、消費減税と最低賃金アップ、子どもへの投資を訴える。立民関係者は「長崎での党勢拡大へ送り出した若手のホープ」と期待する。
 共産党県中部地区委員会は野党共闘による政権交代を目指し、中央レベルの協議の推移を見守る。

◎3区 三つどもえの戦い

 自民現職の谷川弥一氏(79)=6期目=、立憲民主新人の山田勝彦氏(41)、無所属新人の山田博司氏(50)の3人が立候補する見通し。
 前回衆院選で新人3人に大差で勝利した谷川氏は、「安倍政権下での秋解散」がささやかれていた昨年夏ごろ頻繁に離島を訪問するなど、関係者に支持を呼び掛けていた。陣営関係者は年明けすぐの解散はないとみているが、推薦状集めなど着実に準備を進めている。一方、2017年の衆院選後に、陣営関係者が運動員に違法な報酬を支払った事件の影響を懸念する声も聞かれる。
 合流新党の立憲民主党結成に伴い、旧立民県連代表から第3区総支部長となった山田勝彦氏。「自分の活動に専念できるようになった」と、定期的に離島に足を運ぶなど合流新党を「政権の選択肢」としてアピールしている。
 無所属で活動する山田博司氏も各地を細かく回り、街頭演説やミニ集会で支持を訴えている。県議の実績もアピール。「無所属だからこそ選んでくれる有権者もいる。どぶ板で回っており、運動量では負けない」と自信をのぞかせる。
 3区内でも特に五島市は谷川、山田博司両氏をはじめ、山田勝彦氏の父で元農相、正彦氏の地元。先月中旬に立民五島支部を開設した同市議は「難しい戦いになる。いつ解散となってもいいよう活動の拠点にしたい」と気を引き締める。一方、同市の自民関係者は「市民からは『山田勝彦、博司の2人が票を食い合うから谷川は大丈夫』と言われるが、下手すれば五島で負けるかもしれない。結局は(大票田の)大村が勝負になる」と慎重な姿勢だ。

◎4区 自民、候補再考“騒動”も

 自民現職の北村誠吾氏(73)と、元県議で立憲民主新人の末次精一氏(58)が出馬の意向。他に目立った動きはなく、選挙区として初の一騎打ちとなる公算が大きくなっているが、ともに支援態勢の構築に不安を抱える。
 北村氏は昨年9月まで地方創生担当相を務め、全国を視察した実績をアピール。だが、ちぐはぐな国会答弁や退任時の「ほら吹いた」発言で足元の党支部で不和が生じている。
 退任後、西海、松浦、平戸各市の5つの党支部長が、県連幹事長に候補者の再考などを求める上申書を提出した。背景には後継争いを巡る思惑が絡み、一部で県議や首長、国会議員の親族の名前が浮上。大票田の佐世保市の党支部幹部は「主導権争いに巻き込まれたくない」と静観を決め込み、北村氏も事態の沈静化に追われた。
 対する末次氏は2019年1月に旧自由党県連代表の立場で立候補を表明。その後の野党再編で旧国民民主、さらに立民へ移った。前回候補者を擁立した共産は末次氏と「協力できる」と判断し、今回は対抗馬を立てない見通し。
 ただ、佐世保重工労組出身の佐世保市議4人は立民に合流せず国民民主に留まる。国民の地元関係者は「(立民と)考え方に違いはある」。立民への個別合流の道を選んだ社民の関係者も「党運営の方法は全く違う」と不安を隠さず、野党連携の成否は見通せない。
 過去、北村氏と6度対決した県議の宮島大典氏(57)は取材に「立候補は考えていない」。かねて国政進出が“待望”される佐世保市長の朝長則男氏(71)も挑戦を否定する。
 「自民対立民」の構図が濃厚となる中、北村氏を巡る騒動は昨年12月中旬、党本部が北村氏を公認候補と「認定」。表面上は決着したが、党内では「これで一枚岩になれるのか」との声も漏れ、“火種”がくすぶり続ける可能性もある。