努力の主将「出し切った…」 次は大学受験にトライ ラグビー長崎北陽台・大町尚生

【3回戦、東海大大阪仰星―長崎北陽台】前半12分、突破を図る長崎北陽台のフランカー大町尚。後ろは弟のSO大町佳=花園ラグビー場

 自らのラグビー人生の最後と位置づけて臨んだ今大会。2回戦で痛めた右肩は思うように動かなかった。「体はどうなってもいい。勝って次に進む」。長崎北陽台の主将、フランカー大町尚生(3年)は普段通りに先頭に立ち、体も、声も張り続けた。仲間とともにひた向きに戦い抜いた60分間。「悔しいけれど、出し切りはした…」。ノーサイド後、ふと気が緩んだのか。大粒の涙が頬を伝った。
 小中高すべてで主将を務めてきた。強い責任感に統率力-。母の美緒さんは目を細める。「幼いころからキャプテンシーがあったわけじゃない。多くの人や経験が尚生を育ててくれた」
 誰もが認める努力家で、常に「なりたい自分」を追い求めてきた。そのために必要だと思ったことは、妥協せずに継続してきた。高校は「勉強とラグビーを両立したい」と長崎北陽台の理数科を受験。午前5時起床で大村市の自宅からJR通学し、朝練習、授業、部活を終えて午後8時半に帰宅する日々を送ってきた。
 帰宅後も限られた時間を使って勉強と筋トレの毎日。ラグビー選手としては小柄で足も速くはない。それをカバーしてチームに貢献できるようにフィジカルを鍛え上げた。母の食事面の協力も大きかった。身長は166センチながら、体重は入学時から約20キロ増の88キロになっていた。
 1年前に主将を引き継ぐまで、先輩たちの姿勢を学びながら「なりたい主将像」を模索した。北陽台の質の高いラグビーを形にするには、組織力が不可欠。チームの意思統一を図り、理解や意識に温度差が出ないよう苦心した。生活面も含めて厳しいことも言った。
 花園で見せた今季のチーム力は、そんな地道な継続の結晶だった。その中心にいた頼もしいリーダーを、弟のSO大町佳生(2年)はこう見ていた。「プレー、精神両面で引っ張ってくれて、その背中は大きかった。兄としても、主将としても尊敬している」
 小学1年から続けてきたラグビーは、ここで一区切り。花園のグラウンドを後にする時に「まだやりたかったな…」と後ろ髪も引かれたが、決めていたことだ。将来なりたいのは「海外で人の役に立つ仕事をする自分」。そのために、次は大学受験というもう一つの“試合”に挑む。入学共通テストは2週間後。培ってきた継続の力を自信に、また、全力でトライする。


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