【新春特別インタビュー】衰えぬ勝利への情熱。インディ500連覇を狙う佐藤琢磨「スタンドいっぱいのファンの前で、またミルクを飲みたい」

 新型コロナウイルスに世界中が揺れた2020年。今や世界で最もコロナウイルスの感染が深刻となってしまったアメリカだが、6月にはヨーロッパや日本に先駆けてレースを開始し、インディカー・シリーズも幾度のレーススケジュールの変更をしながら全14戦を終了した。

 インディカー参戦11年目であった佐藤琢磨は、8月に延期されたインディ500で2017年に続く2勝目を挙げると共に、2位表彰台、ポールポジション(共にWWTR)を獲得するなど、自己ベストとなるシリーズランキング7位で2020年シーズンを終えた。

 11月上旬に日本に帰国した琢磨は、シーズン中一時帰国もできなかったことから、凱旋優勝報告会やメディア対応、スポンサー挨拶など多忙を極めた。過去にないほど最も忙しいシーズンオフだったと言えるだろう。

 2021年はインディカー参戦12年目。昨年最終戦の直前にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの残留も発表済みの琢磨。今シーズンの目標は、もちろんインディ500連覇だ。

「今年はもちろんインディ500連覇、3勝目を狙います。連覇を狙えるのは前年度の優勝者の僕だけしかないチャンスですからね。インディ500で勝てるなんて本当に光栄なことだし、まさか2度も勝てるとは思っても見なかったけど、チームをはじめ多くの人にサポートしていただいたおかげです」

「不思議なもので2度勝つと、もう一回勝ちたいって思うようになってくる(笑)。2020年は無観客のレースで寂しかったけども、レースそのものはエキサイティングで変わりなかったし、2021年はまたグランドスタンドいっぱいのファンの前で、またミルクを飲みたいですね」と琢磨。

2021年はエンジニアが変わり新たな体制で挑む佐藤琢磨

 2020年に自己ベストを更新した琢磨。2021年シーズンを通じての目標も語る。

「自己ベストを目指したい。もちろんシリーズチャンピオンは目標であることに変わりはないです。だけどそんな簡単じゃない」

「2020年いっぱいで僕のエンジニアだったエディ・ジョーンズが引退してアイルランドに帰ってしまい、新しいエンジニアは奇しくもカーリンから来ることになっています。新しく彼と始めることによって、彼のやり方を理解する時間が少しかかるかもしれないけど、冬のテストの間にしっかりとその辺りをやってシーズンを迎えたいですね」

「今、コロナの影響で冬のテストのスケジュールも少し変わりそうなのですが、短い時間の中でもしっかりテストを消化して開幕を戦いたい」

 インディ500の舞台であるスーパースピードウェイはもちろんロードコース、ストリート、オーバルとすべてのコースレイアウトでポールポジションと勝利を挙げた琢磨。ベテランとしての風格を感じるようになった。12年目のシーズンも裏切らない活躍をしてくれることだろう。

■「彼はしっかり戦える」と角田にエール

 欲を言うならば、琢磨に追い付き、そして追い越そうとする若い日本人ドライバーの出現も期待したい所である。琢磨が現役で走り続けている間に、その姿を見てみたい。

F1では今年から角田裕毅がアルファタウリからフル参戦することが決まった。7年ぶりの日本人ドライバーのフル参戦である。

 その角田を琢磨はどう見ているのだろうか?

「角田選手がアルファタウリに決まったのは本当によかった。ホンダのドライバーとしてF1に出るのは僕以来らしいですね。ぜひとも頑張って欲しい。F2でしっかり成績を残しアピールして上がってきたわけだし、彼はしっかり戦えると思います。心配はしていません」と琢磨。

 わずか20歳、2000年生まれの最年少ドライバーとしてF1デビュー。最短距離でF1に届いた角田に、琢磨はどんな言葉をかけるのだろうか?

「僕が彼にアドバイスをできることは、直接言います(笑)。近いうちに会う機会もありそうだし、特にまわりに聞かせる必要もない。でも彼がF1に行ってくれたことによって、若いドライバーは刺激になったのは間違いないでしょう」

「角田選手は鈴鹿レーシングスクール(SRS)を卒業しているわけだし、今の生徒たちもよい目標にしてくれると思います」

「SRSでも2020年はスケジュールが変わってしまって、僕もなかなか鈴鹿に行けなかった。でも講師陣の方ともレポートをいただいたり、綿密に連絡を取り合っていましたが、2021年はSRS-K(カート)と共にSRS-F(フォーミュラ)の方も、しっかりサポートして行きたいと思っています」

 現役で走り続けることで、若いドライバーたちに「何かを感じて欲しい」と見せ続けてきた琢磨。2度のインディ500優勝は十分すぎるほどの成果だが、若いドライバーたちが追い続けるには、高い険しい目標ほど挑みがいがあるものだ。琢磨が残していく足跡と、それを追う若者たちに期待を寄せる2021年だ。

鈴鹿レーシングスクール校長として育成にも尽力する佐藤琢磨
琢磨の優勝マシンも展示されるツインリンクもてぎのホンダコレクションホールで撮影する佐藤琢磨

© 株式会社三栄