【新型コロナ】時短要請「なぜ飲食店ばかり」 緊急宣言検討、近づく限界 

多くの飲食店から時短要請に困惑する声が効かれた仲見世通り=4日午後5時15分ごろ、川崎市川崎区

 「またか」「もう限界」─。新型コロナウイルス感染の深刻化を巡り、菅義偉首相が神奈川など首都圏の4都県を対象に緊急事態宣言再発令の検討を明らかにした4日、神奈川県内の飲食店から悲鳴が上がった。県が決めた午後8時までの営業時間短縮要請に一定の理解を示しつつも、「なぜ飲食店ばかり」との不満や「十分な補償を」との要望が続出。事態収束は見通せず、正月ムードもなかった街に不安や諦観が広がった。

 「既に経営が厳しい上に時短営業、それも夜間となれば、かなり苦しい」

 JR川崎駅近くの繁華街・仲見世通り、居酒屋の男性店員(42)は消沈する。昨年の緊急事態宣言期間中も2カ月ほど店を休み、今も尾を引く。再発令の検討に「人件費や食材費をどうやって捻出すればいいのか。コロナ禍が早く収束してほしいから、従うしかないが…」と力なく話した。

 「また、ですね」とこぼすのは、横浜・関内の居酒屋に勤務する30代男性だ。午後5時の開店。わずか3時間の営業では「もうけはほとんどない。店を休むしかないかも」。周辺では閉店が相次ぎ、空き店舗が目立ち始めた。早期の収束を願い、協力は惜しまないが、「飲食店だけで効果があるのか」との思いは拭えず、「夜の営業時間を短縮するよりも、営業時の客の人数を制限するなど他に方法があるのでは」との疑念も浮かぶ。「ここまで踏ん張ってきた。諦めたくないが、限界は近い。いつまで続くのか。長引けば、正直きつい」

 「追加の融資を受けても返せるあてがない。個人の飲食店は惨たんたる状況ですよ」。県喫茶飲食生活衛生同業組合(横浜市中区)の八亀忠勝理事長(83)も嘆息する。ただでさえ鈍い客足がさらに遠のく。自身が携わる喫茶店も売り上げは平時の半分以下。経営を担う息子からも「アルバイトを始める」と報告され、訴えに力がこもる。

 「酒類を提供する店舗だけでなく、飲食店は軒並み苦しい。政府はそういう現実に目を向けて、補償の内容を判断してほしい」

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