ぺこぱ、霜降り明星…お笑い第7世代躍進でわかった市場の変化 カギ握る「見栄消費」

ペコパ(左)と霜降り明星

2020年の芸能界を振り返ると、「お笑い第7世代」「東大王」など、若い世代の台頭が目立った。実はこの背景に、“地殻変動”と言っていいほどの市場の変化があるという。「若者研究」で知られ、最新著書「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」(光文社新書)でこうした問題に触れているマーケティングアナリストの原田曜平氏が語る、変化の裏側とは…。

「ずっと若者研究をしてきた中で、私への依頼がこの1~2年、急に増えてきたんです」と原田氏。2010年ごろから、若者といえば、消費に興味がない人が増え「さとり世代」と呼ばれていた。

「若者はビールを飲まない、車も買わない。物欲があまりない。だから企業もテレビ局も中高年をターゲットにするようになり、10年ほど前からしばらく若者研究のニーズが減っていました」

企業はモノを買わない若者層よりも、ボリュームが大きく消費意欲が強い「団塊の世代(1947~49年生まれ)」をメインターゲットとしてきた。しかし、その路線もとうとう限界を迎えている。

「団塊世代が全て後期高齢者になる“2025年問題”です。日本人の平均健康寿命は74歳であり、この年齢あたりになると、買い物に行かない、酒を飲まない、免許を返納するなど、消費をしなくなっていく」

すでに団塊世代マーケットは縮小し始めており、企業はマーケットを若返らせる必要に迫られていた。原田氏への依頼が増えたのは、こうした流れからだった。

その影響はスポンサーからの広告で成り立つテレビ番組に顕著に表れた。

「『東大王』に出ているような、クイズができる東大生は過去にもたくさんいました。お笑い第7世代は優秀な人は多いけど、同じぐらい面白い若い芸人もたくさんいました。なぜ今、若い人たちにスポットが当たったのか。若い世代を求める制作側の目線があったからでしょう。小倉智昭さんやみのもんたさんがテレビから身を引き、『噂の!東京マガジン』が3月に終了するといわれているのも、同じ流れにあります」

一方、「消費しない」と言われ続けていた若者層にも大きな変化が見られるという。

「研究で接していると、若者がこの1~2年で明らかに変わりました。学生が発表するトレンドが10年前よりかなり増えているんです。10年前の“さとり世代”の学生は、何を聞いても『興味がない』で、発表も少なかった」

学生を変えたのは何か? 鍵は「SNS」と「見栄消費」だ。

「ツイッター、インスタ、そしてTikTok。この5年でSNSが広がり、“見栄消費”が復活したんです。平成の30年間、消費が縮小した根本的な原因は“見栄”を張らなくなったことにあると思います。しかし、SNSでセンスの良さやおしゃれさを気軽に表現できるようになり、これが消費意欲を刺激した。タピオカミルクティーブームもそうです。今の若者は消費意欲が強い」

また「メルカリ」の存在も大きいという。

「高いブランド物を買った学生に聞いたら、しばらくしたらメルカリで売るそうです。7~8掛けで売れるから、10万円のものなら実際の負担は2~3万円。我々世代には分からない“一時所有”という感覚です」

原田氏はこうした変化を嗅ぎ取り「これは若者にとどまらない、社会構造の変化です。本にまとめて伝えなければと思いました」と2年ぶりの著作をまとめたという。

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