いずれ日本にも上陸?ロレアル、エスティ・ローダーを抜く中国ブランド化粧品 

中国の化粧品市場は拡大が続いています。経済成長に伴って所得水準が向上した中間層が厚みを増しており、2019年は388億ドル(日本円で約4兆円)まで拡大。2025年には約690億ドルに達する見通しで、19年に比べて約8割増える見込みです。

また、全世界に占める市場シェアも19年の21.4%から25年には29.5%まで拡大する見通しです。市場規模的には世界最大ですが、これまで中国ブランドへの信頼性が低かったことから、「自国メーカー不毛の地」とみなされていました。


中国若者の国産の化粧品志向が強まる

これまで中国市場では、仏ロレアルや米エスティ・ローダーなど欧米企業などの海外勢が高いシェアを占めていました。しかし最近では、特に若者世代を中心に国産の化粧品を好む層が増え、国産メーカーの市場シェアが徐々に高まっています。

実際、「南方都市報」などの調査によると、90年以降に生まれた「Z世代」の約7割の消費者は、自国ブランドを信頼していると報じています。こうした若者世代の消費動向の変化は、これからの中国化粧品市場を展望する上で重要なファクターになると思います。

Z世代が消費のけん引役に

Z世代の世界人口は19年時点で約20億人に達し、アジアの新興国などで消費や文化の新たなトレンドを生み出しています。実際、中国でも同様の傾向が見られ、それは年代別の化粧品平均購入額が大都市・地方都市いずれも15~24歳の若者世代で最も多い点からも伺えます。

中国では、中高年の女性を中心に「化粧は肌によくない」という考えが根強い傾向があります。その一方で、若者世代の化粧品に対する購入意欲は、国産品を中心に非常に高くなっています。

米国市場に株式上場

そうした中、中国国産の化粧品メーカーである「逸仙電商(YSG:ヤッセン)」は、中国の若者世代の間で人気が高い化粧品ブランド「完美日記(パーフェクト・ダイヤリー)」などを展開しています。19年通期の売上高は前年比4.8倍の30.3億元に急拡大。20年1~9月期の売上高も前年同期比73%増の32.7億元と、高い伸びが続いています。

「逸仙電商(YSG:ヤッセン)」は20年11月に米ニューヨーク市場に上場しました。中国国産の化粧品メーカーのパイオニアとして成長著しいことが好感され、上場初日に株価は公開価格(10.5ドル)を75.2%上回る18.4ドルまで急騰しました。今後も中国の化粧品市場では同社を含め、様々な国産メーカーが台頭してくるとみています。

同社の課題としては、競争激化を背景に、販促費が足元で大きく嵩んでおり、これをうまくコントロールし、収益力を高める必要があります。ただ、株式上場も果たした同社は、これから中国化粧品市場で「台風の目」になる可能性もあり、今後も目が離せない存在になるとみています。

<文:市場情報部シニアマネージャー 佐藤一樹>

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