[土持幸三の映像制作101]Vol.58 ATEM Miniを使用したリモート映像講義

txt:土持幸三 構成:編集部

映像講義をリモートで行う

例年、概ね三校で行ってきた川崎市の小学校映像授業だが、2020年はコロナ禍の影響で休校期間等もあり従来の小学校では実施できなかった。しかし、以前の勤務校で行っていた映像授業を新しい赴任校で行いたいという先生の熱意のおかげで新たな小学校で映像授業の講師をさせていただいている。筆者も子供たちもマスクをし、さらに机上にはそれぞれ透明のアクリル板が置かれ、飛沫が飛ばないよう学校側も感染防止に力を入れている。

もう一校、2019年初めて講師を務めた筆者の出身地である鹿児島県の鹿屋市立鹿屋女子高校での映像講義はリモートで行うことになった。2019年は初めての講義ながら、生徒たちが試行錯誤して出来上がった作品がコンテストで最優秀賞をとるなど、素晴らしい成果を上げていたので筆者のテンションも高い。

このコロナ禍でZoomやGoogleなどの各社ビデオ会議ツールを使ってビデオ会議は何度か体験し、小さな照明を足すことでノートパソコン内蔵カメラの画質が向上することはVol.53でも書いた。しかし、今回はビデオ会議ではなくリモート講義なのでカメラ・三脚の説明や編集ソフトの使い方などをスムーズに説明するのはノートパソコン内蔵カメラ一台では難しいと思い、講義内容に合わせた機材を準備する必要があった。

条件としてカメラは一台、もしくは引きと寄りの二台、編集ソフトを立ち上げた状態でパソコン画面を表示してスムーズに動かせること。さらにグリーンバックを使い背景で個性を出したい、となるとスイッチャーが必要。いくつか調べた結果、これらの要望をみたし、かつ購入しやすい価格のものはBlackmagic Design社のATEM Miniシリーズを利用するのが一番適していると判断した。

自宅に簡易スタジオを設置

現在、話題になっているATEM Miniシリーズには三種類あるのだが、ライブ配信する必要が無いのと講義自体を再編集する必要性を感じていないので、一番コストパフォーマンスに優れていると思う無印のATEM Miniを購入した。安価な製品ではあるが、快適にフル機能を使おうとすると外部モニターが必要なため、カメラもBlackmagic Design社のものがよい。筆者は両方とも所有しているので問題なかったが、購入を考えている方は注意が必要だ。

ATEM Miniはとても優秀

ATEM Miniは、4チャンネルのスイッチャー機能とUSBでパソコンにつなぐとWebカメラとして認識してくれ、Google Meetなどでカメラを設定すれば簡単に画像を切り替えられるカメラとして使用することができる。筆者は編集等に使っているメインのパソコンを配信用に使用し、ATEM Miniにはノートパソコンをつなぎ資料や動画、編集ソフトを表示させ、カメラはとりあえず一台をつなげ外部モニターで映りを確認しながらセッティングした。配信用のパソコンでATEM Software Controlを立ち上げると拍子抜けするほどすべてが問題なく作動した。

BMPCC4KだとATEM Mini側からフォーカス含めカメラをコントロールできる

実際の講義も問題なく、生徒たちの顔も良く見え、こちらの呼びかけにもほとんど時間差なく答えてくれていなので一安心したが、やはり顔色というか、生徒が本当に求めていることなどリアルに講義している場合であれば感じ取れることがうまく感じ取れないなど、リモート講義の限界も回を重ねるごとに感じた。あと、生徒が撮影した素材をどのようにして確認するかも問題となった。

事前に素材を送ってもらった方が良いか、今回のようにパソコン画面を映してもらって確認するかが今後の課題だ。事前に送ってもらうにしても相当の下準備と送る手間が学校側にかかってしまう。クラウドを利用しての再生は回線の問題なのか今回はうまくいかなかった。素材がきちんと見れないとアドバイスが難しいので解決策を探さねばならない。

ある意味コロナ禍でなければリモート講義は体験できなかっただろう。ほかの業種の方々がこの状況に対応しようと一生懸命になっている姿を見ると、もっと自分も新しいことに挑戦してみようと思える今回のリモート講義だった。

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