不妊治療と仕事を両立させるために企業ができること

不妊治療を受ける女性の離職率

順天堂大学が2020年12月に公表した研究結果によると、不妊治療開始後の6人に1人がの女性が自分のキャリアを中断・離脱していることがわかりました。
近年は少子高齢化などによる労働人口不足を補うことや、マーケティング業界で消費財の購買決定権の8割を女性が握っているために女性活躍推進が進む企業ほど経営指標、株式市場での価値が高まることが知られていることを考えると、働き盛り・キャリアを積んできた女性が志半ばでキャリアを中断・離脱していくことは、企業にとっても女性自身にとっても非常に残念なことだと言えます。
それでは、企業はどのように不妊治療を受ける女性を支援していくことが効果的なのでしょうか。

不妊治療を受ける女性がキャリアを中断・離脱する要因

企業が不妊治療を受ける女性を支援する効果的な方法のヒントは、キャリアを中断・離脱するリスク因子を見ていくことにあるといえます。
前述の研究結果を見ていくと、「職場でのサポートがないことが1.91倍」「非正規の社員であることが2.65倍」「学歴が大学未満であることが大卒以上の女性と比較して1.58倍」「不妊期間が2年以上の人が2年未満の女性と比較して1.82倍」ということがリスクとして大きいことがわかりました。

不妊治療を受ける女性がキャリアを中断・離脱するリスクを軽減するために企業ができるサポート

不妊治療は予定が急にずれてしまうこと、複数回・長きに渡る通院が必要であることが特徴として考えられ、そこには「職場でのサポート」が非常に重要になってきます。
まず、当事者だけではなく周囲の不妊治療への理解が必要不可欠です。
そのサポートとして、不妊治療を含めた女性の健康に関するセミナーの実施などが考えられます。
さらに、休暇制度やフレックス制度の設立、産業医や保健師などを活用した不妊治療と仕事の両立を相談できる窓口の設置がより有効でしょう。
また、リスクの中に「非正規の社員」「学歴が大学未満」が出てきています。
この点は、学歴が大学未満の女性の雇用形態として非正規社員の占める割合が多いことと関連している可能性が考えられます。
上記でのサポート体制の設立の際に、同一労働同一賃金の一環として、サポートの範囲を非正規社員まで含めることも考慮に入れるなどが有効になってくるのではないでしょうか。
最後に、「不妊期間が2年以上」というリスクについて考えられることとしては、一つの要因として高齢出産などの影響から妊孕性の高い時期を過ぎてから不妊治療を開始することが考えられます。
この影響は、女性のキャリア形成の中で妊孕性があまり重視されていない点にあります。
企業ができるサポートとしては、相談しやすい女性先輩メンターの導入や新卒採用者のキャリア研修時に自分のライフプランに関して考える機会を設けるなどが有効と考えられます。

もはや特別ではない不妊治療

ここまでいくつかのサポートをあげましたが、それぞれの企業規模や経営状況などによって取り入れることのできるサポートはさまざまと考えられます。
現在、不妊治療を受ける人は増加しており特別なことではなくなってきています。
今生じていない企業でも一度、状況に合わせて女性の健康に関してどのようなサポートをしていきたいのか、実際に運用することができるのかを衛生委員会の場などで話し合われてみることをお勧めします。

<参考>
学校法人順天堂「日本女性における不妊治療開始後の離職に影響する要因を明らかに」

© 株式会社ドクタートラスト