コロナで1年遅れ濃厚 車両出入り協議も難航  綾瀬「道の駅」 

綾瀬市役所の北側、県道沿いにある道の駅事業予定地=同市早川

 綾瀬市で2022年度の開業に向け基本設計の概要が明らかになった「道の駅」整備事業。先行して21年夏に供用予定の東名高速道路・綾瀬スマートインターチェンジ(IC)の経済効果を呼び込むことが期待される。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、20年度中に予定していた用地取得や実施設計は完了しない見通し。市はスケジュールの変更に言及していないが、開業が1年遅れになることが濃厚な情勢だ。

 道の駅の基本設計によると、市役所(同市早川)北側に整備する施設規模は、木造2階建てで延べ床面積1800平方メートル。飲食店や農畜産物直売所、案内所、防災倉庫などを設け、駐車場は116台分を確保する。総事業費は約22億円。年間の来場者約56万人、売り上げ約3億4千万円を見込む。

 観光名所がない同市にとって道の駅整備は、IC開業と連動し▽市の知名度アップ▽交流人口の増加▽消費拡大に伴う生産者の所得向上-などの実現につなげる重要施策。運営には指定管理者制度を導入し、地元農家と連携して「綾瀬でないと食べられない、買えないもの」を取りそろえる地域振興事業を目指す。

 当初、20年度中に公募型プロポーザル方式で指定管理者を選定し、民間の発想を取り入れながら詳細な設計を行う予定だった。しかし、コロナ禍で経済活動が停滞し、募集が延期され、実施設計は先送りされる見通しになった。地権者16人に対する用地取得の個別交渉も、感染拡大で思うように進まなかったという。

 さらに、道の駅への車両の出入りに関する県警との協議も難航した。市は、道の駅建設予定地に面する県道から直接車両が出入りできるようにするため「市役所入口」の信号機移設を提案。しかし、県警は安全面や渋滞対策上、課題が多いとして難色を示した。結局、周辺の市道を拡幅して、湘南方面に南下する車両は大きく迂回(うかい)する経路修正を求められた。

 こうした状況を受け、市は昨年の市議会12月定例会に関連予算の繰り越し手続きを提案、承認された。市道の駅整備推進室は「今年の早い段階で説明会を開いて住民に情報提供したい」とし、「現時点では21年着工、22年度開業の計画に変更はない」としている。

 ある市議は「コロナ禍で開業の1年遅れは仕方ないだろう。売り上げ予測も現状ではコロナ禍前の試算で再検討が必要だ」と指摘。その上で「県警との協議が調わず、道の駅に面する県道から直接車両が出入りできなくなることは利便性に関わる新たな課題になる。いずれにしても赤字施設にならないよう慎重に進めなくてはならない」と注文する。

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