議会襲撃のトランプ支持派にバイデン氏「抗議活動じゃない。暴動だ」  

ジョー・バイデン氏(ロイター)

神聖な場に銃弾――。ジョー・バイデン米次期大統領(78)の当選を正式に認定する手続きが行われていた首都ワシントンの連邦議会議事堂内に6日(日本時間7日)、抗議するドナルド・トランプ大統領(74)の支持者らが侵入し、占拠した。米メディアは、堂内にいた1人が撃たれ死亡したと報道。バイデン氏が「暴動だ」と非難すれば、議事堂に向かうよう支持者に呼びかけたトランプ氏は州兵の派遣を認めた。この“議事堂ロックダウン”騒ぎにワシントンでは外出禁止令が発令。20日の大統領就任式を前に、コロナ禍の米国は超非常事態となっている。

米連邦議会議事堂内にトランプ大統領の支持者らがなだれ込んだ。「選挙を盗むな」「でたらめな選挙だ」。6日、首都ワシントンを無秩序と混沌が支配。議会がバイデン次期大統領の当選を正式認定する手続きが一時中断されるなど、米国の区切りとなるはずの日は暗転、緊張感に包まれた。

上院本会議場を一部デモ隊が占拠。下院本会議場のドアのガラスから顔をのぞかせるデモ隊に対し、こわばった表情の警備当局者数人がピストルを構えた。米メディアは、血を流して倒れた、銃で撃たれたとみられるトランプ氏支持者の女性の画像を放映。女性が死亡したとも報じられた。ワシントンのミュリエル・バウザー市長は6日午後6時(日本時間7日午前8時)からの外出禁止令を出した。

事態を受けてバイデン氏は東部デラウェア州で演説。「抗議活動ではない。暴動だ。米国の民主主義が前例のない攻撃を受けている」とトランプ氏支持者の行動を非難し、議事堂からの撤退を求めた。

ケイリー・マクナニー米大統領報道官は、議会占拠に対応するためにトランプ氏が州兵の派遣を承認したとツイッターで明らかにした。トランプ氏はツイッターに投稿した映像メッセージで、議事堂に突入した支持者らに対し「家に帰ろう。平和、そして法と秩序が必要だ」と撤収を呼びかけた。

そもそも“火ダネ”はトランプ氏だった。

昨年11月の大統領選から2か月。選挙に不正があったと主張するトランプ氏側は、裁判などアノ手コノ手を駆使したが実らず、バイデン氏当選の正式認定が行われる6日を迎えた。諦めない支持者はこれに合わせてワシントンで「セーブ・アメリカ・ラリー(米国を救うラリー)」と銘打った集会を開催。首都中心部はこれに備え前日から交通規制がされるなど、不穏な空気が漂っていた。

「USA!」コールが響く集会で、トランプ氏は大統領選で「地滑り的勝利を収めた」と根拠なく主張。敗北を絶対に認めないと重ねて表明し、支持者に対して議会に向かうよう呼びかけると、集会参加者はこれに呼応し、数キロ先の議会に向けて行進した。バリケードを突破し、警察当局と衝突。警察は催涙ガスなどを使ったものの、支持者の一部が議事堂内に入ることを防げなかった。

議会はこの日、下院本会議場で上下両院合同本会議を開き、大統領選の最後の手続きとなる大統領選挙人投票の開票を実施していた。その議事堂内で支持者たちはトランプ氏の支持者旗を掲げて行進し、上院本会議場を占拠。米メディアによると催涙ガスが使用され、合同本会議を仕切る上院議長を兼務するペンス副大統領や上下両院議員らは避難した。開票が抗議活動で中断を余儀なくされる米史上異例の混乱となった。

米メディアによると、警察の機動隊などは催涙弾などを使い、議事堂占拠者の排除に着手した。

2017年1月の大統領就任式では反対派の一部による“暴動”が起こったトランプ氏。今回の選挙結果が覆る見込みはなさそうで、バイデン氏への引き継ぎを行う20日の就任式には出席するのか。さらなる暴動も含めて予断を許さない。

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