小田原忍者も生配信 オンラインで欧米に売り込み

オンライン忍者講座で、質問する米国人男性(左)に答える甚川さん(中央)。職員がそのやりとりをハンドカメラで撮影する=NINJA館

 新型コロナウイルスの影響で激減したインバウンド(訪日外国人客)需要。海外の忍者ブームを背景に売り込みを図っていた小田原市でも同じ状況だが、日本に来られなくても忍者への関心を高めてもらおうと、市観光協会がオンライン講座を始めた。職業が忍者という“プロ”が実際の技や忍者の哲学などを伝授。欧米をはじめ、じわじわと人気が広がりつつある。

 「これが忍者の礼の仕方です」。とある土曜日の午後7時すぎ、すでに営業時間が終わり、ほぼ無人の「小田原城歴史見聞館NINJA館」(小田原市城内)に甚川浩志さんの声が響いた。「職業・忍者」で、戦国期に小田原を治めた北条氏に仕えたとされる「風魔忍者」を現代に再現した「風魔一党」の指南役だ。

 同協会関係者の米国人男性が甚川さんに“弟子入り”する格好で講座は進行。男性が甚川さんに質問して、その返答を英訳していく。時折、海外で視聴する参加者からも質問が電子メールで入る。すぐに同協会職員が甚川さんに伝え、それにも答える。「反応が直接には分からない。視聴者のファクスに答えるラジオDJみたい」と甚川さん。

 新型コロナの影響でインバウンドが激減する中、NINJA館も昨年3月に休館。同11月から土・日曜、祝日限定の完全予約制で再開したものの、訪れる外国人は少ない。

 そこで同協会では同月中旬から、主に欧米に向けたオンライン忍者講座を始めた。事前に申し込み、入金した参加者をフェイスブックのプライベートグループに招待。同協会職員が手持ちカメラで撮影、ライブ配信することにした。

 撮影時間も時差を考えて現地が昼ごろになるよう、欧州向けには午後7時(毎週土曜日)と、米国向けに午前7時(毎週月曜日)を設定した。約1時間1500円で、今年1月にも5件ほどの申し込みがあるという。国内からもある。

 講座では派手なアクションはない。呼吸法や歩行法など地味なものだ。

 甚川さんは「呼吸法で感情をコントロールでき、ものの見方を変えられる。忍者の基本トレーニング」と解説する。情報を集め、争いを避けた忍者の“平和精神”も知ってもらいたいという。

 同協会の担当者は「あくまで日本に来られない間の措置。オンライン講座で関心を高めて、コロナが収束したらぜひ小田原に来てもらいたい」と話している。

 問い合わせは、同協会電話0465(20)4192。

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