ドラフト巧者・西武が仕込んだ7年ぶり「野手ドラフト」への期待値

山川穂高からプレゼントされたバットで素振りをする渡部健人(代表撮影)

西武の2020年ドラフトに01年、13年ドラフト級の期待がかかっている。

昨年10月のドラフトで、西武は12人の新人選手(支配下7人、育成5人)を指名獲得し6日、その全員がメットライフドームに隣接する若獅子寮へ入寮した。

とりわけ特徴的だったのが1位・渡部健人内野手(22=桐蔭横浜大)、3位・山村崇嘉内野手(18=東海大相模)、4位・若林楽人外野手(22=駒大)、6位・タイシンガーブランドン大河内野手(22=東農大オホーツク)、7位・仲三河優太外野手(18=大阪桐蔭)と、支配下だけで5人の野手を指名。育成でも2位・長谷川信哉内野手(18=敦賀気比)、3位・宮本ジョセフ拳外野手(21=名古屋学院大)を指名獲得し計12人中、実に7人の「野手ドラフト」を展開したことだった。

入団会見で、潮崎哲也編成グループディレクターは「考えていた10人ぐらいを狙い通りに獲れた。今年に関しては野手中心で行こうというのは決まっていた」と、リストアップしていた中の大学生4人、高校生3人の野手を確保できた満足度を語っていた。

このうちの何人が3年後、5年後の主力に定着しているのかが仕入部隊と育成現場の腕の見せどころだが、ここ20年で西武が指名人数の過半を野手で埋めた「野手ドラフト」を敢行し、成果を挙げている年度が2度ある。それが2001年と13年だ。

まず自由枠で細川亨捕手(青森大=昨年引退)、2位で中村剛也内野手(大阪桐蔭)、3位指名権はなく、4位で栗山巧外野手(育英)を獲得した01年。5位の竹内和也投手(近江高)を含め指名数はわずか4人ながら、そのうちの上位3人が現役19年以上も第一線で活躍している。中村、栗山は現在でもチームの支柱を成しており、近年のライオンズ史の中でも最上級に評価される黄金ドラフトだ。

そして1位・森友哉捕手(大阪桐蔭)、2位・山川穂高内野手(富士大)と、6位で森の知恵袋でもあるバイプレーヤー・岡田雅利捕手(大阪ガス)を獲得した13年ドラフトが、ここ10年ではそれに匹敵する成果を出している。7人の指名選手中4人が野手だったのだが、上位の2人が18年、19年のパ・リーグMVPを受賞する快挙を達成した。

この2度の「野手ドラフト」に共通しているのは、1人だけでなく2人以上のマルチで、チームの根幹を成す主力を生み出していること。「他球団とつるまない」「選手を見る場所は全方向から」など、長年培ってきた独自のスカウティング・ポリシーのある球団だけに、言葉や数字だけではない評価基準があるようだ。

今回の「1位・渡部、3位・山村」の組み合わせは、高卒左のスラッガー、大卒右の長距離砲という「森、山川ドラフト」を上下で入れ替えた〝裏パターン〟も仕込まれているだけに、まずはこの両者が5年後にどうなっているのか。

それに加えて、他の5人の中からチームの将来を背負って立つ主力がさらに出てくるのか。そのプロセスを含めて、西武はこの20年で3度目となった実験的ドラフトに期待を寄せている。

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