保守の牙城ジョージア州で歴史上初のアフリカ系アメリカ人の上院議員が誕生へ

By Kosuke Takahashi

米ジョージア州の上院2議席を争う決選投票で、民主党候補のラファエル・ウォーノック氏が共和党現職のケリー・ロフラー氏を破り、歴史上初めて同州でアフリカ系アメリカ人の上院議員が誕生することになった。CNNやニューヨークタイムズ紙、ABCニュースなど米主要メディアがウォーノック氏の当確を報じた。

ウォーノック氏は、ジョージア州を含めた南部16州全体でも初のアフリカ系アメリカ人の民主党上院議員にもなる。一方、南部選出のアフリカ系アメリカ人の共和党上院議員としては、これまでにハイラム・レベルス(ミシシッピ州)、ブランチ・ブルース(同)、ティム・スコット(サウスカロライナ州)の3氏がいる。

●保守の牙城

ジョージア州は保守の牙城として知られる。1960年代にキング牧師による人種差別撤廃の公民権運動のやり玉にあがるなど、歴史的にアフリカ系アメリカ人への差別が根強い州として知られてきた。

昨年6月には同州の州都アトランタで飲食店の外に車を停めて眠っていたアフリカ系アメリカ人の男性が警察に撃たれて死亡。同年9月にもアフリカ系男性がアトランタの国際空港近くで車のテールランプが壊れていると保安官に注意されて暴行される事件が発生するなど、警察による射殺や暴行事件も目立つ。

米国でアフリカ系アメリカ人が警官に暴行され死亡した事件をきっかけに人種差別への抗議が内外に広がる中、昨年はアトランタが舞台の米アカデミー賞作品「風と共に去りぬ」の奴隷制の描写が人種差別的だと批判され、配信が一時停止される事態にもなった。

●トランプ大統領への反感

牧師でもあるウォーノック氏の歴史的な当選の背景には、白人至上主義者を擁護するような言動を繰り返し、人種差別解消を求めるデモに強圧的な対応を取ったトランプ大統領への反感が広がったことがある。ジョージア州都市部のアフリカ系アメリカ人の票がウォーノック氏の当選に大きく寄与したとみられる。

上院の残る1議席をめぐっては、民主党の新人候補ジョン・オソフ氏が共和党現職のデービッド・パーデュー議員を大接戦の末、破った。

これで上院の定数100のうち、民主、共和両党の勢力はいずれも50議席と同数となる。しかし、上院の議長をカマラ・ハリス次期副大統領が兼務することから、民主党が事実上の多数派となってジョー・バイデン政権は議会運営で優位に主導権を握ることになる。

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© 高橋浩祐