イタリア、英次世代戦闘機テンペスト開発参加で覚書調印

By Kosuke Takahashi

イギリス、スウェーデン、イタリアの3カ国の国防相は12月21日、イギリスの次世代戦闘機テンペスト開発についての覚書(MOU)に調印した。イタリア国防省が1月3日に発表した。

イギリスとスウェーデン両国は2019年7月に既にテンペスト開発で覚書を交わしている。このため、筆者が東京特派員を務める英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」(JDW)の1月5日付の記事は、今回の3カ国間の調印がイタリアのテンペスト開発への参加を示すものと報じている。

イタリア国防省の発表によると、合意はイギリス主導の「将来戦闘航空システム協力(FCASC)覚書」(Future Combat Air System Cooperation MoU)と呼ばれる。現行の第5世代の主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継機に必要な先進航空システムを得るために、3カ国が対等な立場で研究と開発、さらには共同概念検討を含むあらゆる活動を一緒に推進していくと記されている。

そのうえで、イタリア国防省は「この合意に伴い、現在のところ、2025年に開始予定の事業準備と本格的な開発段階が続くことになる」と付け加えた。

ヨーロッパの次世代の第6世代ステルス戦闘機としては、フランスとドイツ、スペインの3カ国も将来戦闘航空システム(FCAS)と呼ばれる戦闘機とシステムの共同開発を進めており、これとイギリス主導のテンペストの大きく2大グループが動いている。

これについて、イタリア国防省は、第6世代戦闘機の建造という時代のなか、欧州のグループ間で競争を引き起こす危険性を指摘。そして、そうならないようにテンペスト開発と、フランスとドイツ、スペイン3カ国参加のFCASが将来1つに収れんしていく可能性を見極めるよう求めている。

イギリスの次世代戦闘機「テンペスト」のコンセプト図(レオナルド提供)

●テンペストとは

テンペストは、無人機(UAV)群との連携計画を含むイギリスのFCASの中核をなす。その開発を担うチーム・テンペストは、イギリス空軍(RAF)の緊急能力局(RCO)のほか、BAEシステムズ(航空システム担当)、ロールス・ロイス(エンジン)、MBDA(ミサイル)、イタリアのレオナルド(センサーと通信ネットワーク)、イギリスのセキュアクラウド+(ICTシステム)で組織されている。

2020年7月20日付のJDWの記事では、スウェーデンはイギリスのFCASでの協力関係を強化しているものの、テンペスト計画への全面的な参加を約束していないと報じた。その理由としては、スウェーデンが次期戦闘機をめぐって、①同国のサーブ・グリペン戦闘機のさらなる開発向上、②イギリスとイタリア両国とともにテンペスト計画へのフル参加、③別の国際開発、④新たな国産戦闘機開発――との4つの選択肢を有しているからだとJDWの記事は指摘した。

イギリスは現行のユーロファイター・タイフーンの後継として、テンペストの2035年までの実戦配備を目指している。航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機と同じスケジュールでもあり、日英の連携が進んでいる。例えば、日本の防衛省は2021年度から予算41億円を投じ、次期戦闘機用の高機能レーダー技術についての日英共同研究を新規事業として始める。このため、テンペスト開発計画の動向は、日本にとっても目が離せないものとなっている。

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© 高橋浩祐