菅野が急転「巨人残留」 条件面とコロナ禍がネックか

菅野は2021年も巨人のユニホームで投げる

巨人からポスティングシステムでのメジャー移籍を目指していた菅野智之投手(31)は交渉期限の米東部時間7日午後5時(日本時間8日午前7時)までに米球団と契約合意に達することができず、巨人残留が決まった。米大リーグ機構(MLB)公式サイトがFAの投手市場で2番手と高く評価し、注目の存在だったが、着地点を見つけることはできなかった。

第一報は米スポーツ専門局ESPNのジェフ・パッサン記者が自身のツイッターで「日本のスター、トモユキ・スガノは合意に至らず」と伝えた。残留ムードが濃くなる中、交渉期限が迫った同7日午後3時(同8日午前5時)過ぎに、ESPNのケン・ローゼンタール記者らが自身のツイッターに一斉に「パドレスが交渉を続けている」と投稿。電撃合意が期待されたが、まとまらなかった。

2017年のWBC第4回大会で準決勝の米国戦に先発し、6回を投げ3安打1失点(自責0)、6三振1四球と完璧な投球を見せると米球界での評価は急上昇。移籍が待たれる存在となった。昨年12月7日(同8日)にMLBが全30球団に契約可能選手と通知すると米メディアが一斉にトップで報道。MLB公式サイトは「FA市場で2番目に良い投手」との特集を組み、ナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたトレバー・バウアー投手(29=レッズFA)に次ぐ存在とした。

代理人を務めるジョエル・ウルフ氏の元へ多くの球団から連絡が入り、関心の高さに驚いたという。米メディアによれば、先発投手の補強を急務とするジャイアンツ、パドレス、エンゼルス、レッドソックス、ヤンキース、ブルージェイズなどが交渉のテーブルに着いたようで、大争奪戦の様相となった。

期限まで1週間ほどとなった年明けのタイミングで渡米した菅野はウルフ氏と合流し、複数の球団と交渉を進めた。MLBネットワークのジョン・ヘイマン記者は自身のツイッターで「菅野(側)は(大リーグ球団と契約するために)巨人を離れる条件として、ある一定の契約目標を持っていることを最初から各球団に通達していた」と交渉の舞台裏を明かした。

米スポーツ専門サイトのアスレチックは6日(同7日)にマリナーズの菊池雄星投手(29)が2年前に契約した4年5600万ドル(約58億円)を挙げ、同等以上の条件を望んでいると推測した。

しかし、評価や関心の高さとは対照的にコロナ禍による収入の減少が球団経営を圧迫したことでFA市場の動きが停滞。菅野側が望むオファーは得られなかったようだ。米メディアは巨人から4年契約ながら毎シーズン後にオプトアウトできる契約を提示されたと報じていた。

条件面だけではない。残留に含みを持たせる原因となった新型コロナウイルスは世界で感染拡大が続いており、収束への道筋は見えていない。昨季のメジャーはレギュラーシーズン60試合制で行われたが、今季も不透明。調整やモチベーションの維持に加え、感染の不安との闘いを余儀なくされる。“ルーキー”にはあまりに過酷だ。

年齢を考えれば1年でも早く移籍したかっただろうが、熟考の末に「残留」を決断した。いずれにせよ、今季中には海外FA権を取得する。各球団の経営、FA選手の相場が適正価格に戻るのではないかと期待される21年オフにメジャー再挑戦する方が賢明だろう。ポスティングでメジャー移籍を目指したものの、交渉決裂となり、1年後に再挑戦してマリナーズで成功を収めた岩隈久志氏のような前例もある。夢は続く――。

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