薬剤師の有志団体「緊急避妊薬」で松本純議員に要望書提出/薬剤師の信頼感を提示

【2021.01.08配信】緊急避妊薬(アフターピル)の分類を『処方箋医薬品以外の医薬品』に変更し、薬剤師が提供できるよう、署名活動をしている薬剤師有志の会である「日本の医療・薬事制度について考える会」は、薬剤師国会議員の松本純氏(自由民主党国会対策委員長代理、衆議院神奈川1区)に、署名を提出した。12月3日には日本薬剤師会に提出していた。

厚労省薬事企画官の安川氏も同席

要望書の提出は1月7日、衆議院議員会館の松本純氏の部屋で行われた。厚生労働省医薬・生活衛生局・薬事企画官の安川孝志氏も同席した。

今回の署名活動は、こうした多くの賛同人、署名人の思いが集まって実現したものと言える。

要望では、避妊の失敗・無防備な性交の後に服用し、妊娠する確率を下げる「緊急避妊薬(アフターピル)」は、すでに多くの国で薬局販売されているとして、日本の現状を問題視。日本では医師(主に産婦人科医)に処方してもらう必要があり、なるべく早く服用すべき医薬品であるにも関わらず、地理的・時間的・金銭的なハードルが緊急避妊薬へのアクセスを妨げていると指摘している。

緊急避妊薬を市販薬にできるか検討した厚生労働省の会議では、「医療機関では薬の交付時に性教育を行えるが、その機会が失われる」などの指摘があり、市販薬化が見送られてきた。もし市販薬にするのであれば、との問いに対して、日本産科婦人科学会からは「OTCではなく、BPC(Behind the pharmacy Counter=薬剤師が直接管理・保管し、販売時には薬剤師によるコンサルティングを要する薬)とすべき」との意見が提出されている。

こうした状況を受け、同会では、「私たち薬剤師には、地域の生活者が必要とする医薬品を提供するとともに、的確な医療・健康に関する知識を伴って利用者と関わり、自己決定を支援すべき責務があります」「私たちは、『医療者としての信頼』を社会に提示する必要があります」などとして、薬剤師自らの使命に触れている。

緊急避妊薬の分類を「処方箋医薬品」から「処方箋医薬品以外の医薬品」に変更し、薬剤師が処方箋を持たない女性にも緊急避妊薬を提供できるようにすることで、「薬局の利用者が薬剤師を信頼して相談し、共に考える関係性を築くこと」を目指すとしている。

さらに、「緊急避妊薬は、全ての女性に提供され、また女性自身が主体的に取り組むべき包括的な健康管理・支援の一部分に過ぎない」との考えも表明しており、「単に薬が手に入ればよいとするのではなく、緊急避妊薬を必要とした女性に寄り添い、他の避妊方法に関する情報、必要な場合の受診勧奨など、“信頼をともなう関係性”が提供される必要がある」と指摘している。

発起人の高橋秀和氏「職能団体介すだけでない行動必要」

緊急避妊薬を薬局で提供できるようにする“非処方箋薬化”に関して、市民団体や政府の男女共同参画局の政策で必要性が示されているのに対し、薬剤師の職能団体では賛同の意向を示してはいない。

発起人の一人である高橋秀和氏は、「今回、署名の提出ができ、要望を伝えることができたことは、有難いと思っております。問題の大きい分野であり、多くの人から要望も多い問題でもあります。今後、職能団体でも、どのような形が望ましいのかについては国民に率直に説明、対話をして欲しいと思っています。本来なら、国や行政、職能団体がビジョンを示すべき場面ですが、それが叶わなかった場合に、いろいろな次の立場の人のアクションがあると思います。例えば、都道府県薬剤師会であったり、女性の健康問題に熱心に活動されている薬剤師の団体であったりです。そういったところから、批判を加えたり、主張したりすることは正当な民主主義の形ではないかと思っています。今まではこうしたところに対して、諦めの強い社会だったり時代だったように思いますが、それを変えていく必要はあるのではないかと考えています」と話している。

緊急避妊薬の“非処方箋薬化”に関しては、薬剤師、薬局の受け入れ態勢の不十分さを医師が指摘する声もあった。こうした声に対し、S N S上では、「医師は、薬剤師が薬局やドラッグでどう対応しているか、市販薬がどう売られているかに詳しいわけではないため、当然の心配と懸念だと思う。心配や懸念に応えるのは薬剤師側の役目では」とする薬剤師の意見もあった。医師側の懸念に反発するのではなく、丁寧な説明責任が薬剤師側にあるということだろう。今回の署名活動も、こうした求められる薬剤師としてのアクションの一つであったのではないだろうか。

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