チェルシー、ルマンド、チャンポンめん。美味しそうなスニーカーは、どうして生まれた?

突然ですが皆さん。2020年、話題となった石川の人といえば、だれを思い浮かべますか?

ポク、ポク、ポク、チーン!

筆者は断然このお方、美味しそうなスニーカーの人こと、ちゅんちゃんです。

昨年夏に、イトメンの「チャンポンめん」やブルボンの「ルマンド」など、食品のパッケージを手描きで入れたスニーカーの写真をSNSに投稿。それがバズるにバズって「アウト×デラックス」や「ヒルナンデス」にも出演した、あの人です。

これまで描いたスニーカーは60足以上。ルマンドのルマンド感がすごい。

左右絶妙なバランスで描かれたスニーカーは、もちろんすべて手描き。文字やイラストなど、細部にいたるまで筆ひとつで仕上げているそうです。

美大に通っていたわけでも、絵画を習っていたわけでもなく、独学でこの領域まで到達したというのも素晴らしいですよね。

実物をリアルに再現するのがちゅんちゃん流。たわいもない文字も見逃さず、米粒ほどのサイズで描き上げる。

最近は、企業からの依頼でスニーカーのペイントを手がけたり、個展を開催したりと大忙しのちゅんちゃん。そんな彼女も、ほんの半年前は色々と大変だったそうで…。

※ 本人の希望で顔出しNGとなりましたが、実際のちゅんちゃんはとてもオシャレで可愛らしい方でした(筆者談)。

きっかけはある企業のリツイート。

ーーおひさしぶりです!じつは10年ほど前に、お会いしているんですよね。

ちゅんちゃん:よく覚えてますね(笑)。ちょうどスニーカーのカスタムペイントを始めた頃かな?

ーー当時はたしか、もっとパンチの効いた絵でしたよね。トライバルアート的な。

ちゅんちゃん:そうそう。数年前から本業が忙しくなってカスタムペイントはお休みしていたけど、当時は副業としてガンガン塗ってましたね。懐かしいなぁ。

昔の作品。コンバースのハイカットに覆面レスラー「BUSHI」という渋いセレクト(本人撮影)。

ーー商品パッケージを描くようになったのは、いつ頃からなんですか?

ちゅんちゃん:去年の夏頃です。じつはコロナの影響で職を失ってしまって。時間がポッカリと空いたときに「久しぶりに絵を描いてみよう」と思ったんです。

ーーそれは大変でしたね…。でも、一瞬でバズりました。

ちゅんちゃん:最初に描いたイトメンの「チャンポンめん」スニーカーをSNSに投稿したら、公式アカウントがリツイートをしてくれたんです。それが皆さんに知っていただくきっかけになったみたいで。

公式も思わず反応したスニーカー。第一作目からクオリティが高い(本人撮影)。

ーーなんでまた「チャンポンめん」なんですか?

ちゅんちゃん:主食なんです。

ーーえ?

ちゅんちゃん:ほぼ毎日食べるくらい大好き!どうせなら好きなものを描きたいじゃないですか。

ーーそ、そんなもんなんですか?

ちゅんちゃん:よく「どの作業が難しい?」と聞かれるんですけど、集中力を保つことが一番難しいと思うんです。

ーー細かい作業とか多そうですもんね。

ちゅんちゃん:だから好きなものを手に取って「これを描き終えたら、このパッケージを開けて食べるんだ!」というのをモチベーションにするんです。

ーーなるほど。一理ありますね。

ちゅんちゃん:でも、こうやってスニーカーを並べると偏った食生活がバレバレで、正直恥ずかしかったりもしますね。

コレクションを見るだけで、ちゅんちゃんの好物が丸わかり。

好物と靴、交互に”にらめっこ”。

ーーどうやってペイントするんですか?

ちゅんちゃん:まず、商品パッケージと無垢のスニーカーを並べて、10分くらいにらめっこをします。

ーーにらめっこですか。

ちゅんちゃん:そうです。このイラストはこの場所に、ロゴはこのへんに、といった感じで配置していくんです。

ーーすでに完成されているパッケージデザインを、限られたスペースの中に落とし込んでいくわけですね。

ちゅんちゃん:そうそう。しかも靴はふたつでセットなので、分けてレイアウトしないといけません。

ーーたしかにそう考えると、ただのサンプリングじゃないのが分かりますね。難しそう〜。

ちゅんちゃん:瓶ものとかは大変ですね。すでに縦長のデザインで成立してしまっているので。

北陸在住ならおなじみご当地シリーズも。
ーー下書きはするんですか?

ちゅんちゃん:するときとしないときがあります。するときはボールペンでピッピッと。

ーー下書きせずによく描けますよねぇ。

ちゅんちゃん:ちょっと制作途中のスニーカーがあるので描いてみましょうか。

ーーこれはアクリル絵具ですか?

ちゅんちゃん:はい。これをまぜまぜして、近い色を作り出して、えいっ。

ーーおっ!思ったよりも大胆に筆を入れるんですね。

ちゅんちゃん:迷っても仕方ないですからね。あ、抜け毛だ。これを取るのがストレスなんですよ。

意外なほど大胆にどんどん塗られていく。

ーーこんな小さな筆の抜け毛にまで気を遣うとは、繊細だなぁ。

ちゅんちゃん:だれかに売るわけじゃないんですけど、そこまでやらないと気が済まないんですよね。あ、それとアクリル絵具以外にも車やバイクを装飾する「ピンストライプ」もたまに使ったりします。

ーーちなみに完成までにどれくらいかかるものなんですか?

ちゅんちゃん:早いもので3〜4時間、基本的に丸一日はかかります。ちょっと前に完成した「タヒチ風チャンポンめん」は、気合が入りすぎて丸2日かかっちゃいました…。

超力作のタヒチ風チャンポンめん。お隣はイトメンの山菜そば。
先ほど描いてもらったスニーカーの完成形。頂きものの「眼鏡堅パン」が美味しくて、作品化したそう。

ーー去年から今年にかけて、さまざまな商品とのコラボスニーカーが生まれています。

ちゅんちゃん:おかげさまで、県内外いろんな企業さんから声をかけていただいています。

ーーこれから描いてみたいものはありますか?

ちゅんちゃん:最近ツイッターのフォロワーさんがよく「これ美味しいから描いて」と教えてくれるんです。それきっかけで美味しいものを知ることができるのがうれしくて。

ーーこれからもネタは尽きなさそうですね。

ちゅんちゃん:どんどん好物が増えていっちゃう〜。

チャンピオンカレーともコラボ(本人撮影)。
昨年冬には「しいのき迎賓館」で作品を展示。窓のペイントもちゅんちゃんが手がけている(本人撮影)。

「今は、好きなもの描いて、食べて、それを”可愛い”と言ってもらえるのが、ただうれしい状態。とくに大きな目標はないけど、これからもスニーカーに好きなものを描き続けられたらいいなと、ふわっと思っています」という、ちゅんちゃん。

コロナ禍でつかんだチャンスを生かし、どんな作品を生み出してくれるのか、これからも楽しみです。

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(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

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