交流目的のはずが… 東京五輪ホストタウンがコロナ禍で直面する皮肉な現状

積極的にアピールしたが…

新型コロナウイルス禍で東京五輪開催に黄信号がともる中、海外選手団を受け入れるホストタウンにも逆風が吹いている。今大会は地域活性化と国際交流を目的に全国510自治体がホストタウンとして登録されているが、コロナ禍によって想定外の作業に追われているのだ。

岩手・盛岡市はカナダの7人制ラグビー女子、水球チームなどの受け入れ先。事前キャンプでは市民と選手団の握手会やサイン会、子供たちとの触れ合いなどを計画していたが、コロナ禍で全て消滅した。そればかりか昨年12月中旬に国から示された方針に基づき、安全な形で受け入れるマニュアルの作成が義務付けられた。盛岡市の担当者は「空港と市内の移動、ホテルの食事、一般市民と接触しないで練習する方法など詳細を決め、カナダ側と合意しないといけない」と四苦八苦する。

昨年3月、カナダ側は東京五輪に選手団を派遣しない方針を決定。延期によって再び派遣を決めたが、その経緯があるだけに盛岡市も神経質になるのは当然だ。カナダ・ビクトリア市とは35年間も姉妹都市として信頼関係を築いてきたため「市民から表立った拒否反応はない」(同市担当者)というが、他の自治体ではすでに摩擦も起きている。あるホストタウンでは海外選手が来ることを怖がる地元住民、来日を不安視する海外選手団の〝板挟み〟状態だという。

もともと「交流」を目的に始めた事業。橋本聖子五輪相(56)も積極的にアピールしてきたが、今はいかに接触しないかに苦慮するとは、何とも皮肉な話だ。

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