挫折を経て…つかんだ主演 五島出身 俳優・上野凱 渋谷TANPEN映画祭CLIMAX at 佐世保

映画祭で主演に選ばれた上野凱(本人提供)

 五島市出身の俳優、上野凱(がい)(22)が12月、東京・渋谷で開かれた「第5回渋谷TANPEN映画祭CLIMAX at 佐世保」のオリジナル作品主演オーディションに合格した。ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト準グランプリという輝かしい経歴を持つが、一度は挫折。再起してようやくチャンスをつかんだ。長崎新聞社のリモート取材に対し、「影響力のある俳優になりたい。地元長崎のPRにも貢献したい」と意気込む。

◆ 自分に言い訳
 上野は2012年、同市立福江中2年の時に母親が同コンテストに応募、約1万3千人の中から準グランプリに。中学卒業後、上京し堀越学園に入学。大手芸能事務所「アミューズ」に所属しテレビドラマや映画「くちびるに歌を」(15年)、人気バンド「GLAY」のミュージックビデオなどに出演した。しかし、約2年で事務所を退所し帰郷。「当時は失敗するのが怖かった。自らすすんで芸能活動をしているわけではないと、自分に言い訳していた」と振り返る。

◆ もう一度挑戦
 帰郷後、テレビや会員制交流サイト(SNS)で、東京で活躍している友達の姿を見て、自分のやりたいことについて、改めて考えたという。「もう一度、演技に挑戦したい気持ちが芽生えた。芸能活動の場を失って気付いたのかもしれません」。通信制の高校を卒業後、19年に今度は自らの意思で俳優を志し、再び上京した。
 しかし、状況は厳しかった。アルバイトで生計を立てながら俳優養成所「トライストーン・アクティングラボ(TSAL)」に入所。演技を基礎から学び、ドラマなどのオーディションを受け続ける日々が続いた。「小さな役をもらうだけでも難しかった。かつて大手事務所に所属していた頃を思い出し、当時いかに恵まれていたか、よく分かった」。

◆ 早期完成願う
 そんな時、同映画祭の主演オーディションが渋谷と佐世保で開かれるのを知った。「古里の長崎県と今住んでいる東京が舞台となる作品、必ず出たい」と決意。渋谷でのオーディションに臨み、応募者49人の中から見事、主演の座を射止めた。「合格を知らされ、心の中でガッツポーズを取った。普段の生活を必死に生きてきたことが、評価につながったのかも」と笑顔で話す。
 今後は、2月に佐世保で開くオーディションで選ばれる、もう1人の主演俳優とともに、同映画祭のPR活動を行い、実行委が製作する短編作品に出演する。しかし、新型コロナ禍の影響で、作品の撮影や公開時期は未定という。「映画が早く完成することを願っている。主演の実績を自分のプロフィルに載せたい」。再びスクリーンに登場できる日を待ちわびながら、演技力を磨く日々が続く。

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