キミ・ライコネン特別インタビュー「41歳でのF1続行が正解か失敗かなんて分からない。考えずに走るだけ」

 現在41歳のキミ・ライコネンは、アルファロメオとの契約を延長し、2021年もF1に参戦することを決めた。2020年シーズンにF1エントリー回数332回、出走回数329回という記録を作ったライコネンは、少なくともあと1年はF1で走り、さらに最多記録を更新していくことになる。

 アルファロメオのマシンは戦闘力が乏しく、ライコネンは2020年に4ポイントしか獲得することができなかった。その状況でライコネンがF1残留を決断したことは、多くの人々に驚きを持って受け止められた。フィンランド出身のF1ジャーナリストであるヘイキ・クルタ氏が、契約延長、記録更新、コロナ禍でのF1などについて、ライコネンに聞いた。

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 キミ・ライコネンは、メディアからインタビューを受けることが好きではない。ジャーナリストたちと話す義務を負わずにレースができればパラダイスなのに、と彼は何度も発言している。

 2020年シーズンには、この願いがほぼ叶えられた。パンデミックによって、ドライバーとメディアとの接触は制限されたのだ。

 41歳のライコネンは、2021年もアルファロメオに残り、レースを続けることを決めた。2020年にメディアから解放されたことで、少なくともあと1年はF1に残る気になったのではないかと思っていた私は、シーズン後のインタビューにおいて、ライコネンにその質問をぶつけてみた。

2020年F1オーストラリアGP木曜 取材を受けるキミ・ライコネン(アルファロメオ)

 するとライコネンは肩をすくめてこう答えた。

「実際のところ、グランプリの週末にジャーナリストの数が減ったことは、意識していなかった。以前とは違うやり方になったけれど、(メディア対応の)作業量は変わらなかったね」

「前はメディアと直接会って話していたが、今はコンピュータを通して話をする。僕にとっては、30分座って質問に答えるだけだから、そういう意味では何も変わっていない。残念だけどね」

 コロナ禍でもレースウイークエンドの過ごし方は全く変わらなかったとライコネンは言う。

「週末がこんなに変わってしまった、という話がたくさん出ているけれど、僕はそんな風には全然感じなかった。ホテルからサーキットに行って、またホテルに帰る。毎日その繰り返しだ。僕に関しては、週末の過ごし方は全く変わらなかったよ。外出して食事をとるのが好きな人にとっては、制限が厳しかったのだろうね。でも僕はフィジオのマーク・アーナルと一緒に移動し、これまでと全く同じ行動をしていた」

 正直言って私は、キミが新契約を結ぶと聞いた時にはとても驚いた。20年前の2000年10月に彼がザウバーからF1にデビューすると聞いた時と同じぐらいの驚きだった。

 私がそう話すと、キミは微笑んで「僕のなかでは、このふたつの出来事は全くつながらないけどね」と言い、こう続けた。

「もちろん、決断が悪い結果につながることもあれば、ポジティブな驚きを生むこともある。それはいつだって同じだから、今後どうなるかについては興味はないよ」

 アルファロメオで好成績を挙げることが困難な状況にもかかわらず、レースを続けるとキミが決めたことを、多くのメディア関係者が意外なニュースとして受け止めたが、本人は周囲の驚きに気付いていなかったという。

「それについてはよく知らないな。このニュースがどう受け取られたかを気にしていなかったからね」

「僕としては別に、人それぞれ、考えたいように考えてもらって構わない」

 ライコネンは、決断を下すのに幾分時間がかかったと認めた。真夏のころに結論を出さなければならなかったとしたら、引退を選んだ可能性が高いものと思われる。

「考えるべきことがたくさんあった。残留が発表されたのはイモラの週末だったが、契約を結んだのはその前日だった。契約交渉の最終段階に入ってから、いろいろな修正が入るものなんだ。とはいえ何かの方向性を変えるべき大きな理由はなかった。つまりこの契約の裏側には、特に大きなドラマのようなものはなかったということだ」

 ライコネンは2020年、F1決勝出走回数において329戦に到達、これまでの記録を更新した。契約を延長したことで、この記録をさらに伸ばしていくことになる。しかし本人は「そんなのは数字に過ぎない」と言い、関心はない様子だ。

 今後についてライコネンはどういうプランを立てているのだろう。これまでと同じパターンで、2021年のシーズン終盤になってから2022年の去就を考えるのか、と尋ねると「何も決めていない」という答えが返ってきた。
「どうなるか、状況を見ていこうじゃないか」

2020年F1アイフェルGPで323戦出走に到達、チームから祝福を受けるキミ・ライコネン(アルファロメオ)

 ファン投票による2020年『アクション・オブ・ザ・イヤー』に、ポルトガルGPでのキミのオープニングラップが選ばれ、彼は2020年末のFIA表彰式で表彰された。1周で10もポジションを上げた彼の走りに、皆が魅了されたのだ。

「あのラップは気持ちよかったね。でもレースを終えてみると、あの1周目は何も好結果をもたらしてはくれなかった。ポイント上では、レースの間ずっと最後尾にいたのと同じだからね」

 現在のライコネンは、他のF1関係者同様、2021年シーズン開幕に向けて、しっかり充電しているところだ。

「ひたすら休暇を楽しんで、その後、新シーズンに向けての仕事を開始する」とライコネンは語った。

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